兵庫県神戸市にオフィスを構えるワイドソフトデザインは、自社開発の3Dエンジンを武器に、「ビジュアル」に特化した製品・サービスを提供している。「実物や感性のイメージをわかりやすく伝えたい」「3D CADを導入しなくても3Dデータを手軽に使えるようにしたい」などのニーズに対応。自動車や建築、医療などの業界でユーザー企業を獲得している。最近では、3Dによる可視化だけでなく、「体験する」がテーマのVR関連ビジネスにも着手して、順調に売り上げを伸ばしている。(取材・文/佐相彰彦)
Company Data
会社名 ワイドソフトデザイン
所在地 兵庫県神戸市
設立 1995年2月7日
資本金 1500万円
従業員数 23人
事業概要 3Dエンジンをベースにアプリケーションを開発。住宅建築シミュレーションのほか、ユーザー企業の要望に応じカスタマイズして製品・サービスを提供
URL:https://www.widesoft.co.jp/
3D環境が
あたりまえの世界へ
土肥豊和
代表取締役
ワイドソフトデザインの設立は1995年。もともと日本IBMで3D CAD関連ビジネスに携わっていた土肥豊和氏が「3D CADを誰でも使えるようにしたい」との考えから立ち上げた会社だ。3Dエンジン「VENUS」を自社で開発。このエンジンを使えば、3D関連の製品・サービスをつくりやすくなる。市場に投入したところ、ユーザー企業からアプリケーションも含めて提供してほしいという要望を受けて対応。現在は、基本的な機能を搭載したアプリケーションを開発し、VENUSと組み合わせて「VENUS Viewer」という名称で提供している。
エンジンと基本アプリケーションを開発したことから、「ユーザー企業の要望に迅速に応えられるようになった」と土肥代表取締役。実現した製品・サービスが、実際に建てる前に3DのCGで仮想的に体験できる「住宅建築シミュレーション」だ。「平面図ではわかりにくい吹き抜け空間や間取りのイメージを顧客に伝えやすい、と建築関連業者から評価を得ている」と土肥代表取締役は手ごたえを感じている。
このほか、フェンスや表示板などの大型設備を設置するシミュレーションが可能なシステムや3Dで橋梁の形状が確認できるシステム、サービスとしてプレゼンボード作成なども手がけており、「決して多くはないものの、常にユーザー企業として3~4社を獲得し、一緒にプロジェクトにかかわる状況が続いている」と土肥代表取締役はアピールする。
リーマン・ショック後に
新卒採用へ
いまは堅調に成長しているものの、「リーマン・ショックのときは非常に厳しい状況に陥った」と土肥代表取締役は振り返る。ただでさえコスト削減に向けてITシステムのリプレースや新規導入を抑える企業が続出しているなか、3Dという付加価値のあるシステムやサービスを採用しようと意識する企業は少なかった。そういう状況のなかで、あえて土肥代表取締役が実施したことは、新卒を採用するということだった。2年に1回のペースで、今でも続けている。
「リーマン・ショック以前は中途採用がメインだったが、どんな不況にも対応するには会社の体質を変えていくことが成長につながると判断した」という。新卒採用によって、先輩社員がわかりやすく指導する制度、主体的に意見の違いや多様性をとことん協議できる風通しのよい環境、すべての社員が納得のいくワークライフバランスなど、働きやすさを追求。読書や昼寝など、自由に休憩できるリフレッシュスペースもオフィスに設置した。このような取り組みによって、「新しいアイデアやビジュアル化をさらに強化したデザイン力などが生まれて、さらに小回りの利く体制が整って案件の獲得につながるようになった」と土肥代表取締役はかみしめる。
働きやすい環境によって、社員が新しいことに取り組むという姿勢が生まれ、新たに始めたのがVRだ。2016年頃から着手している。土肥代表取締役は、「ビジュアルという点では、可視化するだけでなく今後は体験することが、さらにイメージしやすいものを提供することにつながる」といい切る。また、新卒採用では「芸大卒を採用した」と、技術者中心のIT系アイデアだけではない人材によって社内に新しい風を吹かせようとしている。
もともとエンジンとアプリケーションによって3Dに特化した武器をもち、加えてデザイン力やアイデア力の強化、VRの開発によって、他社との差異化をさらに図ったワイドソフトデザイン。今年度(18年6月期)の売り上げは、前年度比10%増以上にあたる2億円を目指している。