「前期業績は絶好調」と聞くが、稼働率が高まったことで足下の数字が上がっただけのこと。新しいことを仕掛けで業績が上がったわけではなく、需要の拡大という外部要因に引きずられての好業績だとすれば、引き続き、需要拡大が続く保証はない。すべてが他人任せのうちは、自分で自分の未来を描くことはできない。
ITは私たちの社会やビジネスの未来を大きく変革し、期待と需要は今後も拡大していく。しかし、それは工数や物販を前提としたSI需要が拡大することではない。
これまでのITは本業を支援する合理化の手段として、常にコスト・プレッシャーに晒されてきた。しかし、いまITは本業そのものへと役割を変えようとしている。ITを前提に経営や業務を変革しようという動きだ。本業を外注しようなどという企業はなく、内製化が拡大していくことになるだろう。この変化に対応するには、次の三つのステージを進めていく必要がある。
◎ステージ1:お客様の情報システムの徹底した効率化
人手に依存したシステムの運用管理をクラウドに移行し、自動化の範囲を拡大する。コストや管理負担を極限まで減らすことで、次のステージへ移るための余力とリソースを確保する。
◎ステージ2:新しいSI手法の習熟
ビジネスの成果に供するサービスのみを短期間にバグフリーで提供するために、アジャイル開発やDevOpsが必要となる。コンテナやマイクロサービス、サーバーレスといったキーワードに対応できなくてはならない。このスキルを支えにお客様の内製化への取り組みを支援する。
◎ステージ3:共創と内製化
お客様のビジネスの創造に貢献する。ITを前提とした新しいビジネス・モデルやプロセスを一緒になって実現する「共創」を自らの役割とする。「要求があればその通りにつくる」という立場ではなく、「どうすればいいのかを一緒になって考え、試行錯誤を繰り返しながらビジネスの成功をともに手にする」というイーブン・パートナーとして、お客様の内製化に寄与することだ。
従来の延長線上で未来を描くのではなく、未来から今を逆引きし、そこに至るシナリオを描くことだ。未来に至る道筋がはっきりと見えてくるだろう。
ネットコマース 代表取締役CEO 斎藤昌義
略歴

斎藤 昌義(さいとう まさのり)
1958年生まれ。日本IBMで営業を担当した後、コンサルティングサービスのネットコマースを設立して代表取締役に就任。ユーザー企業には適切なITソリューションの選び方を提案し、ITベンダーには効果的な営業手法などをトレーニングするサービスを提供する。