このところ日本のテレビのニュース番組が、韓国の政局のニュースで占拠されている。徴用工や日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)など、日本がらみでなく政局そのものだ。韓国の政局通の評論家も数多く登場してきた。
これが大変おもしろい。文在寅大統領の側近である曺国法務大臣の娘の有名大学への不正入学、息子の兵役逃れ、家族ぐるみの不透明な投資など、どんどん登場する。それでも大統領は任命した。そして何よりも際立つことは、与野党ともキャラが立っていることだ。
よく考えて見ると、日本は韓国に比較してダイナミズムに欠け出した、と言う点は認めざるを得ない。なんだかんだ言っても、韓国の政局は10年ごとに保守陣営と革新陣営による政権交代が行われている。デモをすると10万人規模はすぐに集まる。若者の政治参加も積極的だ。
経済に目を向けても、サムソン電子グループは日本の大手電機メーカーが束になってもかなわないほどの世界的な企業に成長した。インターネットや電子マネ―の普及も日本とは比較にならない。
それに、駐韓米大使を呼び出してのGSOMIA失望表明の自粛要請やマスコミを駆使して時の権力に切り込む検察の動きなど、韓国社会の持つ特有の旧癖は残しつつも、日本ではとてもここまではやれないのではないかと思われることを軽くやってのけている。韓国人と聞くと、興奮しやすい人たちのように思われがちだが、韓国に行くと分かるが普通の韓国人は親日的で親切だ。私も韓国で新幹線を乗り間違えたが、車掌が日本ではとてもここまではやってくれないと思われるほど親切に対応してくれた。
政府が先頭になり日本製品の不買運動、日本への旅行自粛を訴えても7割の店には日本製品が並び、日本への旅行客が減ったといっても月に50万人、1%の国民は毎月日本にやってきている。
韓流ドラマの良さは思いもかけない筋書き、スピードある展開、情愛の深さ、裏切りと次々と繰り出す舞台装置に吸い付けられる。それに比べると、日本はドラマも政治も経済も安定しているものの、少し退屈になったことは否めない。韓国の平均経済成長率が年3%、日本が1%とすると、その差は2ポイント。10年では100兆円も違ってくる。日本人が韓流ドラマから学ぶ余地はまだまだありそうだ。
アジアビジネス探索者 増田辰弘
略歴

増田 辰弘(ますだ たつひろ)
1947年9月生まれ。島根県出身。72年、法政大学法学部卒業。73年、神奈川県入庁、産業政策課、工業貿易課主幹など産業振興用務を行う。2001年より産能大学経営学部教授、05年、法政大学大学院客員教授を経て、現在、法政大学経営革新フォーラム事務局長、15年NPO法人アジア起業家村推進機構アジア経営戦略研究所長。「日本人にマネできないアジア企業の成功モデル」(日刊工業新聞社)など多数の著書がある。