数年前、山手線のなかで男子高校生が手鏡を見ながらあぶら取り紙でテカリを抑えているシーンを初めて目にしたときは、さすがにビックリしてしまった。

 そう言えば、ニキビがたくさんあって、お肌のお手入れなどには全く興味のなさそうな脂ギッシュな男子は、最近ではあまりに見かけない。

 前回も触れたが、歴史を振り返ると、化粧文化は女性だけでなく男性の間でも存在してきた。日本でも、平安時代の貴族は男女ともに白塗りの化粧をし、よい香りを身につけていたというし、戦国時代の武将らも、いつ死んで首を取られても恥ずかしくないようにと、顔には化粧を施し、髪を整え、兜に香をたきしめて戦いに挑んでいたという記録がある。

 明治以降、とくに戦中の日本は、「富国強兵」の名のもとに男性の化粧を完全に否定してきた。それから半世紀が経ち、ようやくその時代にすり込まれた呪縛から解き放たれつつあるのだろう。

 ここ数年、男性用のアイブロウキットやあぶら取り紙など、今までは女性向けのものしかなかったアイテムが続々と発売されている。まだ全国的に普及しているとは言えないが、ものによってはかなりの市民権を得つつある。

 戦争を知らない世代の、そのまた子供たちが、再び男性の化粧を肯定するようになってきたのは、ごく自然な時代の流れなのだろうと感じている。

(アイスタイル取締役アットコスメ主宰 山田メユミ)