NECが展開する「BluStellar共創パートナープログラム」の枠組みでは、NECとパートナーとの協業による新たなDX商材も誕生している。その代表的な事例が、大塚商会と共同開発したオンプレミス型の生成AI専用サーバー「美琴(みこと) powered by cotomi」(以下、美琴)である。NECのサーバーとAI技術に、大塚商会が培った知見や営業リソースを組み合わせ、中堅・中小企業の生成AI活用を大きく加速するソリューションとして展開していく。
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完全クローズドの環境で安全に生成AI活用が可能
美琴は、x86サーバー「Express5800」にGPUを搭載し、NECが開発した大規模言語モデル(LLM)の「cotomi(コトミ)」と、生成AIの活用を支援するソフトウェア群の「NEC Generative AI Framework」をプリインストールした製品。高い日本語性能を備えたcotomiを、外部ネットワークとの接続がない環境でも、価格を抑えて利用できる特長を持つ。
国産LLMとGPUを搭載した生成AI専用サーバー
「美琴 powered by cotomi」
製品の優位性について、商品化を主導した大塚商会トータルソリューショングループの山口大樹・上席執行役員は、「世の中に散在する既知のデータを探索して回答を得る場合は『ChatGPT』や『Gemini』などが有効だが、国内企業が自社の機密情報を生成AIで扱いたい場合、国産LLMが利用できるアプライアンスが秀でている」とし、「美琴はオンプレ型で完全国産LLMを積んだ他に類を見ないサーバーだ」と話す。
大塚商会
山口大樹 上席執行役員
美琴はオンプレミス型のため、社内の機微なデータを生成AIで活用することが可能となっている。RAG(検索拡張生成)をチューニングすることで、日々アップデートされる企業内の最新情報への対応や、回答精度の向上も可能だ。「美琴は情報漏えいに危機意識を持つ企業や、クラウド利用に不安を感じている企業に採用してもらいたい。例えば、特許関係の情報はもちろん、検索キーワードさえも外に出したくないといった企業でも、美琴なら検索も含めて完全クローズドな状態で生成AIの活用ができる。多くの企業にニーズがある」と山口上席執行役員は開発の狙いを明かす。
大塚商会では、製品に活用支援サービスを組み合わせた形で美琴を販売している。ターゲットとなる業種は特に定めていないが、現在導入している企業のユースケースとしては、コールセンター業務でオペレーターによる対応を支援する用途が先行しているという。そのほかにも、製造業で製品に関するマニュアルや仕様書、残業規定などの社内規定の情報を、RAGを使って収集するケースが多いとのこと。また、社内規定を美琴で取り扱う際、中小企業では複数の規定の間で表記の不統一や矛盾がみられるケースが多いことから、社会保険労務士と連携して、規定の整合性を確保しAIが理解しやすい表記に改訂する支援サービスも提供している。
BluStellar共創型商材として他のパートナーへの広がりも視野に
美琴は、共創による社会課題解決、つまりBluStellarモデルの下で誕生した製品であるところがポイントだ。大塚商会は、すでにAI領域でNEC発のスタートアップが開発したデータ分析ソリューションの「dotData」を社内導入し、営業領域で成果を出すとともに、中堅・中小企業向けに外販の実績もあった。そこにcotomiが誕生し、日本企業のために海外のビッグテックに依存しないAI環境を提供していきたいと考える大塚裕司社長の思いと合致したことで、美琴の共同開発に至った。
NEC BluStellarパートナーセールス統括部の木下隆之・上席プロフェッショナルは、大塚商会を「BluStellarのオファリングとシナリオづくりを最も実現しやすいパートナーの1社だ」と評する。「大塚商会との協業で、中堅・中小企業をはじめとする、われわれの手が直接届かない領域にもNECの生成AI技術を提供できる。美琴はBluStellarの思想にもマッチする商材であり、大塚商会のパートナーにも販売してもらいたい」と語る。
NEC
木下隆之 上席プロフェッショナル
今後は、cotomiの基本機能に対して業務処理関連のプロセスに必要な機能を追加していくほか、拡張的な活用方法として、「kintone」のクラウドデータベースとの連携も進める。また、AIエージェントの領域でも、ノーコードで生成AIアプリを開発できる「Dify」を搭載して対応していく計画だ。その上でパートナーからもフィードバックを受け、「お客様の大きなニーズがあるところにベストフィットさせるようなオファリングをしていく」(木下上席プロフェッショナル)との道筋を描く。
NECでは、同様なビジネスの広がりを他のパートナーとの間でも拡大させていく構えだ。木下上席プロフェッショナルは「PC、サーバー、ネットワーク機器などの製品販売を担っていただいているパートナー各社にも、ニーズを把握して解決策を提供する新たなビジネス領域に取り組んでいただきたい。NECがご支援していく」と訴える。
また大塚商会の山口上席執行役員も、「美琴については、機能がフィットするニーズを持つお客様に適切な形でアプローチしていく」とし、「お客様と対話を繰り返してテクノロジーで解決できる部分をキャッチアップして、美琴以外でもNECと新たなプロジェクトを立ち上げていきたい」と、次なる価値創出の展開を見据えている。
美琴をいち早く自社サービスに適用 新たな事業成長モデルを模索する三和コンピュータ
美琴は、NECの最新生成AI技術と大塚商会が得意とする中小企業向けビジネスの知見を組み合わせて誕生したソリューションだが、そこから先の展開は大塚商会のみならず、他の業種・業態・地域に強みをもったBluStellar共創パートナーが、独自のシナリオを用意して販売展開していくことが期待されている。
NECのパートナーとして早い段階で美琴を採用し、現在ビジネス展開に向けて社内業務への実装を行っているのが三和コンピュータだ。同社は創業55年の独立系SIerで、基幹業務システムやITインフラの構築・保守を展開。中でも、ゴルフ場向けの基幹システムでは特に豊富な実績を持つ。現在は生体認証による入退室管理システムをはじめ、映像セキュリティソリューションなども手掛けている。多くの中堅SIerと同様、今後の持続的なビジネス成長には課題感を抱いており、鎌田修三・執行役員は「特に、急速に普及していく生成AIとどう向き合っていくべきか、試行錯誤していた」と明かす。
三和コンピュータ
鎌田修三 執行役員
その中で、NECの日本語LLMを搭載したオンプレ型の美琴が発売されるという情報を入手した。「企業は、重要なデータをパブリックなクラウドサービスに上げることには抵抗がある。しかも、従量課金制の生成AIサービスでは、コストの制約が大きくうまく使いこなせないと感じていた。そこで、当社がクライアントゼロになって美琴で何かできることがあるはずだという思いに至った」(鎌田執行役員)。
自社ヘルプデスク業務に適用し知見を外販サービスへ
同社は自社利用および検証を目的として、社内で生成AIを適用できる業務の洗い出しから始め、自社が顧客向けに展開しているサービスに絞り、RAGを使って自分たちの得意な領域のデータや機微なデータを活用する業務を検討した。
そこでたどり着いたのが、年間で約8千件の問い合わせが寄せられる、ゴルフ場向けヘルプデスク業務への適用だった。電話で問い合わせを受けて質問内容をkintoneに記録し、過去の対応と比較しながら履歴やマニュアルを確認して、解決できない場合担当SEにエスカレーションして回答する業務プロセスだが、これらを全て人力で対応していた。「生成AIを導入することで業務が効率化され、人的負担も減る。当社のように何らかのソリューションを展開しているSIerであれば、ヘルプデスク業務の効率化に同様のニーズがあると考え、いち早く美琴を購入して本格的な挑戦を始めた」と鎌田執行役員は語る。
プロジェクトの立ち上げにあたっては、事前に生成AIに興味を持つ人材に有償の生成AIサービスのアカウントを付与し、そこから事業開発に前向きなメンバーを選出。技術面では、RAGに投入するデータのクリーニングや言葉の統一、チャンク化やマークダウン方式などの知見を蓄積し、現在はkintoneのデータをクレンジングして自動的にLLMに渡す作業に取り組んでいるという。
「それらは全て当社独自の生成AI運用ノウハウとなり、外販時のアピールにもなる。2月をめどに自社のヘルプデスクで運用を開始し、年度内に成果を明らかにできるようにしたい」(鎌田執行役員)。
自社サービスにアドオンする姿勢を他のパートナーも参考に
三和コンピュータの取り組みで特筆すべきは、生成AIの事業化プロジェクトを、実行するという強い意志の下で早期に開始した点にある。鎌田執行役員は「今までは単一のモノやサービスを売るビジネスモデルだったが、われわれの価値は何かと考えたとき、これからはハードウェアとSIを組み合わせて独自の価値にして提案するオファリングや、業界ごとのシナリオ創出が必要になると考えた」とする。
NEC
那須大輔 グループ長
同社の取り組みについて、NEC BluStellarパートナーセールス統括部 第1営業グループの那須大輔・グループ長は、「三和コンピュータのAIに取り組むスピードは早く、cotomiや美琴以外にも、ゴルフ場の芝の管理などでAIを使えないかといち早く相談を受けていた。現在はパートナー会等を通じ、同社の取り組みから気付きを得ているパートナーも増えている」と評価する。
NEC
北澤美映 シニアプロフェッショナル
同グループの北澤美映・シニアプロフェッショナルも、「パートナー各社の強みは、お客様がどういう価値を求め、どのような困りごとを抱えているのかを知っているところ。私たちも評価機の貸し出しやトレーニングなどの支援体制を整備し、ともに価値視点でのビジネスを創出したい」と、パートナーに対して全面的な支援を行う意思を強調した。
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