パソコンじたばた日記

<パソコンじたばた日記>第1回

2002/07/01 15:26

週刊BCN 2002年07月01日vol.947掲載

 思い起こせば2年前、私はパソコンの新たな弱点を見つけた。

 その頃、私は煙草をやめた。最後の1本を吸い終えたところで、長年、愛用してきた灰皿もライターもすべて、ぽいっと捨ててしまった。禁煙を始めてまず、どういう変化があったか。人によって違いはあるらしいが、私の場合は「匂い」だった。ものの2、3日で、とにかく匂いに敏感になったのである。なかでもニコチンの匂い、煙草を「吸い終えた後」の匂いに、非常に反応するようになってしまった。

 そこで登場するのが、我が家のパソコンである。毎日、起動させるたびに、強烈なニコチン臭が仕事部屋全体に広がることに、初めて気づいてしまったのだ。その悪臭たるや、とても我慢の出来るものではなかった。まるで、排気ガスをバンバン放出している古いバスの後ろをついて歩いているような気分になるくらいのものだった。

 考えてみれば当たり前の話だった。私の喫煙量は、仕事をしているときがいちばん多かったのだし、パソコンの脇の灰皿は、本体もその周辺も含めて、いつも灰が飛び散っていた。一応は、フィルター代わりのペーパータオルなどを、パソコン本体の吸気口のような場所に申し訳程度に貼ってはいたが、あっという間に黒くなった。つまり、私のパソコンは、もう十分過ぎるほど煙草を吸っていたのである。そして、パソコンを起動させ、ファンが回転するたびに、蓄えたニコチン臭を放出する。それは、とても耐えられる臭いではなかった。

 結局、それが原因で、さほど古くもなかったパソコンを、私は買い換える羽目に陥った。調子も悪くなかったし、愛着もあったのに。禁煙者が増えている昨今、パソコンにも「脱臭フィルター」なり、臭いから身を守る方法などというものは、考えられないものだろうかと真剣に考えた。

 そして、臭いに負けた私には、あらたな悲劇が待ち受けていたのである。
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