北斗七星

北斗七星 2002年8月5日付 Vol.952

2002/08/05 15:38

週刊BCN 2002年08月05日vol.952掲載

▼厳しい暑さが身にしみるなか、先日、涼を求めて水族館に足を運んだ。ひんやりとした空気のなかで、ゆったりと泳ぐ魚たちを見るのは心が安らぐ。水槽の前の大人も子供も、みな一様に穏やかな表情だ。で、ふと隣を見ると、少なからずの人が携帯電話に魚たちを画像に取り込んでいる。友人や家族にメールで涼を分けてあげようとしているのか。もはや携帯電話は、従来の「もしもし電話」の世界から大きく飛び出そうとしている。

▼移動体通信が公共関係者や一部の富裕層の持ち物だった1980年代。当時は自動車電話が中心だったが、ある日、実際に移動中の自動車から電話をかけさせてもらい、「なるほど便利」と感心した記憶がある。車両の屋根には太いアンテナ、車内には大きな受信機が鎮座していた。いまや端末は手のひらに収まる大きさになり、用途は限りなく拡がっている。90年代後半、携帯電話の普及が一気に進んだことで、さまざまなアプリケーションが育ち、花開いていった。

▼「議会対策や都市計画なら(市長として)自信はある。だが、ITは言葉ひとつとっても理解が難しい」、「しかし思い切ってやってみることが何より重要」。ITを活用した先進的街づくりに取り組む東京・三鷹市の安田養次郎市長の言葉だが、同様の思いは多くの首長に共通するのではないか。実際、携帯電話に見られるように、ITは多くの人に使われてみて初めて、思いもよらぬアプリケーションが生まれる側面がある。先ずはスタートありきの姿勢も重要だろう。
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