Letters from the World

「.NET」はカンフル剤になるか

2002/10/14 15:37

週刊BCN 2002年10月14日vol.961掲載

 日本でも多くの媒体で「.NET」のことが取り上げられていると聞く。マイクロソフトが提唱する「.NET」は、いわゆるウェブサービスのひとつだ。もちろんアメリカでも「.NET」はまるで流行語のようで、関連の記事はよく目につく。あえてウェブサービスという言葉を使わずに「.NET」と呼ばせているところに、相変わらずのマイクロソフトらしい強引さを感じる。

 同社はIBMやサン・マイクロシステムズ、オラクルといったIT関連大手を始め、ダイムラー・クライスラーやユナイテッド航空といった一般の企業まで巻き込んだ業界団体を設立するなど、自身が業界の中心となる為に躍起である。近年はっきりと翳りの見えるIT業界へのカンフル剤として提携各社と共に大きな期待を寄せているのがわかる。

 しかし各調査機関の展望は決して明るくない。ガートナーは「ようやく下地が整った段階」で、「来年度までは制限された使用に留まる」と見ている。ザップシンクは「セキュリティ関連の成長は期待できるが、多くの企業は導入には消極的」、IDCはやや楽観的だが、それでも「現状では技術が先行しており、需要があるのかどうかではなく先端技術に興味をもつ技術者や一部大手企業が積極的に推進しているだけ」であり「いまだ市場の反応は冷ややか」という。これらの見解は、どの調査機関も一致している。いずれにせよ、あと数年先は混沌とした状況が続くのであろう。

 どのような企業にとっても、それを補う売り上げを見込めないならば、今後更なるIT関連先行投資には躊躇せざるを得ず、それはウェブサービスとて例外ではないだろう。しかも別な懸念もひとつある。私は先に「カンフル剤」と表現したが、マイクロソフトという会社は伝統的に「自分たちのためだけ」のカンフル剤が大好きである。「.NET」が新たな需要を喚起し市場に受け入れられるかどうかは、実は同社がどれほど市場を独占したいかどうかにもかかっているのではないだろうか。(ニューヨーク発)
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