Letters from the World

SARS、香港と中国の取り組みの違い

2003/04/21 19:47

週刊BCN 2003年04月21日vol.987掲載

 SARS(重症急性呼吸器症候群)のニュースが賑わっている。イラク戦争がなかったら、より大きく報道されたことだろう。中国と台湾をベースに海外向けの営業を行っているわれわれのような会社にとって、SARSの被害は大きい。(アコードインターナショナル 原 真)

 筆者は3月末に香港と深センの国境を4度通過したが、そこで痛感したことは、香港と中国のSARSに対する対応の違いである。香港側では、大きなポスターにSARSの警告と対処方法が記されており、税関や入出国管理の職員は全員がマスクをかけていた。

 一方、中国側では、マスクもかけていないし、注意書きもない。一般市民の意識も違うのか、香港と深側ではマスクの装着率もまったく違っている。香港発台北行きの中華航空の機内では、3月30日の時点ですでに乗務員は全員マスクを装着しており、スチュワーデス全員がイスラムの女性の如く、美人か否かの見極めが難しくなってしまった。これらの違いの背景にあるのは、中国政府の報道規制である。

 中国政府は、対外的なイメージ悪化を恐れたためか、SARS被害の公式発表をするまでにひどく時間をかけてしまった。3月中旬に開催された全国人民代表会議への影響を考えて、意図的に遅らされたという説もある。このような対応は、政府に対して不信感を抱くことになる。同時にSARSの世界中への蔓延を許してしまうことになった。一方、香港では現在、空港からの出国者に対して体温測定を実施している。

 38度以上ある乗客に対しては医者の診断を即時に実施するなど、感染者の流出に歯止めをかける努力をしている。今後、懸念されることがある。5月1日のメーデーに始まる中国の長期休暇に、多くの中国人がSARSにこだわることなく、香港や海外になだれ出ることだ。これらの人々が、SARS騒ぎに拍車をかけないで欲しいと、切に願う次第である。(台北発)
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