旅-経営者の目線-

<旅-経営者の目線->38.シンガポール

2003/10/06 15:27

週刊BCN 2003年10月06日vol.1009掲載

 1980年5月、リコー東京支店のキャンペーン招待で社員と共にシンガポール5日間の旅をした。

 ここは、特別想い出の深い場所である。1944年(昭和19年)の秋に門司港を出航し、11月9日に魔のバシー海峡を無事越えて、上陸した当時の昭南島なのだ。初めて見る赤道直下の色鮮やかな南国の樹々の緑が目にしみた。ブキテマ兵舎で数日を過ごした後、シンガポール駅発の泰緬鉄道に乗り、マラッカ海峡に面するポートディクソンに向かった。そして終戦2年後の1947年7月に復員船で帰国の途中、補給のために再び寄港した。

 今回の旅の前後に、欧米などに海外旅行をしたが、やはりこうして生きて再びシンガポールを訪ねるのは、言葉につくせない特別な想いがあった。

 市中の様子は近代化されて大きく変っており、市内もよく整備されて路上にゴミがなく綺麗なのに驚いた。聞けばゴミ投棄は厳罰だという。我が国も見習うべきだと思った。

 かつてのスラム街はなくなっていて、市民はすべて高層アパート住まいだという。だが、その高層アパートの窓辺が洗濯物で満艦飾になっているのを見て苦笑させられた。

 36年ぶりに見るシンガポール駅は昔のままであった。当時を想い出しながら見て回った。ロープウェイでセントーサ島に渡る。その夜、夜空に輝く南十字星を眺め往時を懐かしく想い出していた。

 翌日は自転車で島内を1周。マラッカ海峡は戦時中と違って、航行する船が多い。遙かなる郷愁に浸りながら、時の過ぎるのを忘れて海を眺めていた。
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