北斗七星

北斗七星 2003年12月1日付 Vol.1017

2003/12/01 15:38

週刊BCN 2003年12月01日vol.1017掲載

▼あの惨劇から2年。市民の心の傷が癒えない米ニューヨーク市に降り立った。2機の旅客機衝突で崩壊した115階建てツインビル跡地「グラウンドゼロ」前には、胸前で十字を切る者や涙に震える声を上げる人など、いまだそこに蕫平和感﨟はなかった。

▼このビルと巻き添えで損壊したビルには、多くの金融機関のオフィスが入居し、データセンターもろとも失われた。だが、事件発生から1週間後に再開された市場には、ほとんどの金融機関が復帰したという。蕫米国の威信﨟が漲(みなぎ)った瞬間だ。ある大手証券会社は「この規模の災害は想定内」と述懐。この商魂逞しさには感服した。

▼マンハッタンでは、携帯電話にイヤホンを付けて会話しながら闊歩する若者をよく目にした。このスタイルが「クール(格好いい)」だという。携帯電話で先端を行く日本では「ダサい」格好だが、完全に価値観が違う。ニューヨーク市地下鉄の車内にも、携帯電話の通信範囲を広げる検討が進んでいるとか。公共の場で大声で喋る米国文化がそうさせたのではなく、これも「緊急の際に安否を知らせるため」という危機管理が優先する。

▼日本の大手ITベンダーが北米で展開するソフトウェア・サービス事業が縮小の一途だ。米国の通信業界不況も一因。だが、銀行のATMでさえ停止させてしまう程度の「危機管理」意識では、到底任せられない。前出の証券会社は、「核攻撃」をも想定した復旧計画を持つ。日本の企業もこの惨劇から何かを学ぶべきだ。
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