アップルコンピュータがマッキントッシュを発表して、既に20年が経った。かねてよりマックユーザーは非常に熱心なことで知られている。今や少数派でしかないアップルの人気を支えるのは、彼ら熱心なファン達の草の根の活動であり、それこそがアップルの財産であるはずだ。現在でも公式非公式を問わず多くのユーザーグループが存在しており、その中には海外で生活する日本人へのサポートを主目的とするものまであるという。そのマックファンたちにとって、年に1度の大イベントである「マックワールド・カンファレンス&エキスポ」は今年、長年慣れ親しんだニューヨークを離れ、古巣のボストンで開催される。移転については、ニューヨーク以外のファンたちからも不満の声が多く、移転の是非からやアップルの対応まで多くの疑問が呈された。

 そもそもこのイベントは、ボストンが発祥である。このこともあって、アップルはすんなりと周囲の理解が得られるものと考えていたようだ。ところが、より広い層でのシェア確保を目指すアップルと、大都市での開催による集客力の維持と、出展社の確保を優先する主催者側と意見が対立。昨年はとうとうアップル自らが出展を取りやめる寸前までに追い込まれた。最終的にはアップルの強引な主張が通った訳だが、今でもニューヨークでの開催を希望する関係者は多い。さらに残念なことにこの騒動の最中には、ファンたちの声が反映されることはなかった。

 アップルはこれまでにも、度々ユーザーをないがしろにしてきた企業だ。そしてその都度軌道修正を強いられてきた経緯があり、今回もその轍を踏みかねない。ニューヨークからボストンまでは、電車で2時間程。しかし東海岸のファンの多くは、ニューヨークへは出向いても、ボストンへは行かないだろう。ブランドの求心力を失い、iPodの成功による莫大な利益を糧に、ユーザーを無視して我が道を進むアップルは、この先どこへ向かうのだろうか(ニューヨーク発:ジャーナリスト 田中秀憲)