Letters from the World

メリット高いF1スポンサー

2004/06/07 15:37

週刊BCN 2004年06月07日vol.1042掲載

 韓国IT大手のサムソンが、F1グランプリレースへのスポンサードを計画しているという。F1へのIT関連企業のスポンサーとしては、既にヒューレット・パッカード(HP)やコンピュータ・アソシエイツ、インテルなどが参入済みで、近年はボーダフォンやAT&Tといった通信関係、さらにはNTTドコモやパナソニックといった日本企業まで、世界の大手IT企業がずらりとその名を連ねている。

 この競技では、車体の設計から、走行データの解析や戦略の分析など、大規模にIT技術が導入されており、有力チームともなれば、その規模や技術力は一般のIT企業とは比べ物にならないほど高レベルだという。そのためスポンサードする各企業は、通常金銭面のサポートだけでなく、技術供与も同時に行うのが一般的だ。これにより自社の技術力の高さを直接的に誇示することが可能で、双方にメリットが大きいためである。

 しかし一番の魅力は、やはり世界中に向けての宣伝効果であり、莫大なスポンサー料も費用対効果を考えれば割安だという。今年からF1は、バーレーンや中国など、西側諸国以外の国々でも開催されることになっている。この傾向は西側諸国でのタバコ広告の規制強化によるものだが、新しい商圏での開催は、結果として他の産業の注目を集めることとなり、ITのみならず、各分野の大手企業の参入が相次いでいる。

 中国を中心とするアジアは、次世代の有望な市場として、世界中の産業が期待していることは言うまでもない。IT分野も同様で、このエリアをこれまでのように、製品の生産拠点や、人件費の安い労働力の産出地としてだけではなく、将来有望な市場として見直し始めている。そしてこれらの地域では、大手といえどもその知名度は低く、企業イメージも西側諸国ほどに良好であるとは言えない。そのため大手も中小も同じ土俵での市場争いを強いられる。今後しばらくはF1さながらの厳しい競争が続くに違いない。(米ニューヨーク発:ジャーナリスト 田中秀憲)
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