▼昨年末、IT企業やソフト業界団体の懇談会で多くの経営者が喫緊の経営課題にあげていたのが人材育成である。情報サービス産業協会(JISA)の棚橋康郎会長も、「このままではソフト開発の下流工程だけではなく、上流工程も中国やインドといったオフショアに流れる」と、危機感を露わ。

▼地方のシステムインテグレータ(SI)を取材しても、優秀な人材の不足に悩んでいる。優秀なシステムエンジニア(SE)をどれだけ抱えておけるかが、業績に直結すると言っても過言ではない。SEを十分確保できないばっかりに、「プロジェクトを受注できるチャンスがありながら、泣く泣く見送る場合もある」とはある経営者のぼやきである。

▼地方SIのように資金的に脆弱な企業の場合では、自社での研修もままならず競争力が落ちているのも重大な問題。これに応える形で、地方の業界団体や行政がIT人材の育成を産業振興策に掲げる事例が増えてきた。ある県の担当者は、「毎回非常に好評だ。人材不足に悩む地元のIT企業への就職率もほぼ100%」とその効果に胸を張る。

▼これまで「産業支援センター」といったハコ物を作ることが行政の産業支援というイメージがあった。しかし各地で新しいステージとして「人材育成」というソフトの部分に本気で取り組み始めた。いわゆる「三位一体改革」で地方交付税が減額されているなかで、行政も地元企業のニーズに応える動きが活発化している。2006年は、IT産業振興を加速する「転機の年」にしなければならない。