旅の蜃気楼

祭りに江戸っ子の心意気をみた

2006/05/29 15:38

週刊BCN 2006年05月29日vol.1139掲載

【浅草発】祭りの熱気は異様だ。もう30年も前の話になる。北千住に「祭」という屋号の焼き鳥屋があった。いつも煙と人で充満していた。祭り好きの店主は、鳥を焼くのも半纏姿だった。神輿を担いだ大きな写真が壁紙になっていた。担ぎ手の主人公はもちろん店主だ。その顔があまりに“格好”いいので、今も目に焼きついている。祭りの名は「三社祭」。5月21日、早朝、浅草神社から3基の宮神輿が「そいや、そいや」の掛け声とともに境内から担ぎ出された。

▼宮神輿は一日かけて氏子町内を練り歩き、夕刻になって、お宮に帰ってくる。朝を「宮出し」、夕刻を「宮入り」という。「そいや、そいや」の威勢のいい掛け声で一日中、浅草の街はにぎわう。祭りの雰囲気には人を「その気にさせる」ものがある。とくに三社祭の宮出しは特別だ。3基の宮神輿を担ごうと関東一円から、祭り好きが集まってくる。狭い境内は担ぎ手でびっしり埋め尽くされ、担ぎ棒をわれ先とばかりに奪い合い、人と人のぶつかり合いで異様な熱気となる。ここで注釈を加えたい。浅草神社は仲見世で有名な浅草寺の右隣に位置してある。“ある”としたのは、その存在を知らない人が多いと感じるからだ。一度、浅草詣での折に、浅草神社に立ち寄ってください。こちらが三社祭の主催者で、由来によると浅草神社が大家の立場にある。

▼「宮出し」を見た。神社の境内に設営された特別桟敷席だから、まさに目の前で神輿が揺れる。「火事と喧嘩は江戸の華」だ。江戸っ子の心意気を目の当たりにする。普段あまり見ない本気の喧嘩には手に汗を握る。3基の神輿は浅草神社の氏子町内の南、東、西地区にそれぞれ分かれる。一之宮神輿は西部、二之宮神輿は南部、三之宮神輿は東部だ。担ぎ手集団はそれぞれに担ぐ雰囲気をつくる。ただ担ぐだけではない。「そいや、そいや」と調子をとりながら、神輿を“格好よく”担ぐのが三社祭の真髄だ。一之宮、三之宮は実にきれいだった。境内を出た神輿は町内から町内を練り歩く。神輿の動きはGPS携帯で位置確認ができた。今年からだ。まずはGoogleで浅草神社で検索してください。祭りもIT化しています。来年はライブでいかがですか。(BCN社長・奥田喜久男)
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