旅の蜃気楼

雨上がりの山で「夢」を見た

2006/06/05 15:38

週刊BCN 2006年06月05日vol.1140掲載

【二子山発】雨上がりの山は、固い樹木も緑の葉もみずみずしい。あたり一面に乳白色の霧が薄く漂っている。ホトトギスが鳴いた。珍しいことだ。位置を変えて3回、鳴いた。風が吹いた。雨水がパラパラ降り落ちてきた。冷やっこい。山道がぬかるんでいる。急坂になると木の根がむき出しになっている。根っこを踏むと、つるっと滑る。慎重に歩く。沢筋に入るといつもは枯れた沢も雨上がりは濁流が轟々と、音を立てて流れている。途中にある流れの静かな水場で、泥だらけの登山靴を洗う。泥は溶けて水に流れた。上流に手をつけて水をすくって飲む。美味い。

▼携帯電話のカメラでその世界を写した。樹木の太い幹から新芽が出ている。この木の名前はなんだろう。山道を歩いていると、知らない木と花ばかりだ。「あの木の名前は何ですか」「この花の名前は?」。何度、同じ質問をしたことだろう。何度聞いても、同じ質問をする。そういえば、英語と似ている。何度、意味を聞いても同じ単語の意味を聞いているようなものだ。白い花は、とても甘い匂いがした。額アジサイに似ている。しかし、木の花だから違う。「この花の名前は何ですか」。誰も知らない。これも写真を撮った。このデジタルデータを、Googleの検索スペースに入力した。リターンキーを押すと、花の名前が出てきた──もしこんな検索ができるなら、とても便利だ。

▼映像の検索ソフトでNECは新しい技術を発表した。例えば、「イナバウアー」と「女子」をキーボードに入力する。すると、パソコンに録画してある、これまでの記録から「荒川静香」の映像だけを自動的に探し出す、という代物だ。便利だ。NECは2008年をめどに実用化を目指している。技術は市場を創造する。商品化とは「夢」の具現化だ。幻想的な雨上がりの山で「夢」を見た。花を写すと自動的に花の名前を教えてくれるデジカメだ。すぐに買います。(BCN社長・奥田喜久男)
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