旅の蜃気楼

「あと500日」を迎えた北京

2007/04/02 15:38

週刊BCN 2007年04月02日vol.1181掲載

【北京発】2008年8月8日、北京オリンピックを目指して世界の人々がやってくる。受け入れ側の会場は今、どんな様子なんだろう。ちょっと見に行ってみた。掲載写真は3月25日撮影の建設現場風景だ。ちょうどこの日、500日のカウントダウンが始まった。オリンピック会場は紫禁城の中軸線を北に延長した位置にある。さらに線を伸ばすと、北斗七星に見守られた唯一不動の北極星に行き着く。「この地に本格的な王城を築いたのは、元のフビライ・ハーンであるが、その時から数えて700年をこえる古都である」(北京物語、林田愼之助著)。古都の南北を貫く線上に古代と近代の建築物が並ぶわけだ。なんと壮大なドラマではないか。

▼建設現場を車で回った。広い広い。1年前には、まだ整地の真っ最中だった。今は緩やかな起伏のある広大な会場敷地では競技場、選手の宿泊棟の建設が進行中だ。現地の案内人もドライバーも誇らしげに、オリンピック村を紹介した。中国が北京オリンピック招致を獲得したのは、01年7月13日。あれからおよそ6年の歳月が過ぎた。立ち退き住民の負の問題が表面化した。それでもオリンピックは人々の夢となって根づいた。

▼紫禁城には数世紀前の時計を世界から集めた博物館がある。乾清門をくぐり中軸線を右に曲がった奥まったところの奉先殿にある。何の期待もなく入館した。暗い部屋の明かりに目が慣れるにつれ、驚きが増幅する。「すごい!こんな大きな時計が、18世紀にあったのか。英国から来たんだ」。館内にある映像説明を見たら驚きは頂点に達した。腰の高さほどの、からくり時計だ。ゼンマイ仕掛けの長針が12時を指すと鐘が鳴る。すると文字盤の下段にある人形の腕が動き出して筆を手に持った。やおら墨をつけて、短冊に漢詩を書く。うまい。間違いなく「私よりお上手」だ。豪華な時計は権力の象徴でもある。その数の多さにも目を見張った。

▼紫禁城の主要な門は今、修繕中だ。街中のトイレも改善している。WTOへの加盟は2001年12月11日だった。知的財産権なども先進国レベルを目指してほしい。WTO版オリンピックもできるといい。中国は進化している。(BCN社長・奥田喜久男)
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