【本郷発】パスポートには過去の記録があって、見返すとその時の気分が甦ってくる。2週間前、ソウルに向かう機内でパスポートを眺めながら思い出に浸っていた。出国の前日に、突然、日本METの社長・韋文彬さんが本郷のBCN編集部を訪ねてくれた。「台湾の会社を売却し、整理してきました。日本の会社は存続しています。これからは収益だけではない仕事をしたいと思っています」と韋さんは言う。韋さんは団塊の世代だ。最近この世代の引退が目立っている。一様に世のため人のためと言い始めた。とてもいいことだと思っている。改めてパスポートを眺めると、台湾への旅がめっきり減っている。

▼この10年を振り返ると、台湾から韓国へ。そして中国へ訪問先が推移している。その間にインドがあって、パスポートの入国スタンプは、経済発展の流れそのものを反映している。数年前、JALの機内誌だったと記憶しているが、「韓国の人は本が好きで、いろんな形態の書店ができている」という記事を読んで、意外な感じがした。韓国ではアマゾンのようなネットショッピングで本を買って、書店は影が薄いのかと思っていたからだ。先日の旅で、ソウルの中心街にある書店を訪れた。いやはや、すごい大きさです。熱気むんむんの混雑ぶり。夢中になって立ち読み(というより、座り読み)をする人もいるほどだ。

▼本紙4月9日号で、日韓IT経営協会会長の吉川良三さんが、韓国は『理の世界』、日本は『気の世界』と話しておられた。面白い分類の仕方だと思って興味をもっていたら、「朝鮮民族を読み解く」(古田博司著、筑摩書房刊)に、理と気の世界が詳しく載っていた。韓国には「ウリ銀行」がある。ウリとは身内(仲間)の意味。他人はナム。ウリは「理と気の世界」を共有し、ナムとは「理の世界」で存在する。そんな印象をもった。では台湾の人はというと、いつでも「理と気の世界」が混在しているように感じる。韋さん一人の人柄だけではないように思う。お国柄で理と気の出し方が違うようだ。旅は人との出会いが楽しみだ。今年は久しぶりに「コンピュテックス台北」に出かけてみよう。(BCN社長・奥田喜久男)