北斗七星

北斗七星 2008年5月19日付 Vol.1235

2008/05/19 15:38

週刊BCN 2008年05月19日vol.1235掲載

▼4月下旬に中国北京に降り立った。市内は「北京五輪」開催を8月に控えて好況に沸き、オフィスビルの建設ラッシュが続く。建設途中の様子を見ると、驚くことに鉄筋がなくモルタル造りで高層化していた。5月12日、四川省で起きた「大地震」の余波は北京にまで届き、揺れを観測。「地震は起きない」ことを前提とした建造物に被害が及んでいないかと危惧する。

▼その「北京五輪」だが、日本での盛り上がりはイマイチ。北京の歴史や文化を知ろうと都内の書店を回ってみたが、これまでの五輪開催と異なり「オリンピックコーナー」というような特設展示はない。毒入り餃子問題や東シナ海問題、チベット問題──などが相次いだことによる反中国感情を考慮してのことなのだろうか。隣国で「平和の祭典」を掲げる大イベントを迎える姿勢としては寂しい。

▼旧ソ連下で開催された「モスクワ五輪」では、アフガン侵攻の制裁として西側諸国がボイコット。当時、柔道で参加が決まっていた山下泰裕選手が涙ながらに不参加決定に答えていたのを思い出す。ウィキペディアで検索すると、「コップ酒を何杯もあおり止め処なく流れる涙に堪えた」と、当時の山下選手の回想がある。スポーツ競技の頂点である五輪は、政治バランスに影響されず粛々と開催されるべきと思う。

▼三国志に「時務(じむ)を識(し)るは、俊傑(しゅんけつ)にあり」とある。中国に忠告すべきは敢然として行い、時代を読み行動を考えるべきだ。
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