▼9月1日夜、福田首相が辞任を表明した。安倍前首相ほどの唐突さはないにしても、なぜこの時期に辞任かという疑問は残る。在任1年足らずでは、これといった業績も見当たらない。目玉と目された「消費者庁」の創設も日の目をみないまま。皮肉な見方をすれば、「他人事(ひとごと)内閣」が「投げ出し内閣」になっただけとも言える。

▼安倍、福田と続いた辞任劇を企業経営に置き換えてみれば、とんでもない話であることがよく分かる。業績不振に陥った企業の再建を託された社長が「ライバルの攻勢が激しく、社員に支持されていない」といった理由で辞任したら、どうなるか。残らざるを得ない人たちは絶望の淵に立たされることになる。本紙で17年余にわたって掲載している「KEY PERSON」には、企業再建を託された経営者が数多く登場してきたが、誰一人として途中で投げ出したりした人物はいない。困難に立ち向かい、地を這うような努力を積み重ねてきた人からみれば、首相の辞任は身勝手と映ることだろう。

▼唯一の救いは、次期首相の本命とみられる麻生太郎氏がアニメやゲームなどコンテンツ産業の理解者である点だ。かつて本紙では「秋葉原は今」シリーズで当時の麻生外務大臣のコメントを紹介したことがある。秋葉原ダイビルにあるデジタルハリウッド大学における政策スピーチで、麻生大臣は「コンテンツは文化外交で大切な役割を果たす」と明言した。デジタルコンテンツ業界にとっては、転じて福となす出来事かもしれない。