【本郷発】AV評論家の麻倉怜士さんからお便りをいただいた。「私の19冊目(海外翻訳含む)の本、『オーディオの作法』(ソフトバンク新書)が、来週、発売されます」。だから書評を書いてね、という内容だ。団塊世代は、そもそもLPレコード世代だ。音にこだわってしまう世代なのだ。麻倉さんは1950年生まれだから、同世代の音が好きな人に向けての解説書といってよい。63項目の作法を手引きにして、さあ、オーディオの世界へ旅に出よう。

▼麻倉さんは記す。「いいオーディオは、素晴らしい音楽がこの世に生まれてきた、まさにその瞬間の“空気の震え”を追体験させてくれます」。この文章の響きは、どこかで耳にしているぞ。はて、どこだろうか。そうだ、ソムリエがワインの風味を表現する時の響きだ。文章は視覚なのだけど、聴覚で好みを聞き分けているようだ。機材のスペックはお金しだいともいわれる。はたしてどうか。現実的にトータル30万円から100万円を対象にしている。庶民派の評論家は目線が確かだ。良い音を聞くには、機材を含めて、すべての環境を整えることを勧めている。これを63の作法で、解説している。ありがたい。

▼作法の中に、麻倉さんらしい興味深い項目がある。音を聞く部屋の環境が音の生命を決めるというものだ。コンサートホールの形状を知る読者の方はうなずくに違いない。高級マンションのカタログなどを見ると、ガランとした広いリビングに高級オーディオが置いてあるイメージ写真が載っているものがある。あれは音質的には非常に望ましくない。ビジュアル的にいい部屋は、オーディオ的には良くない。そこで作法44番。「ある程度、不純物があるところに物事のよさがあるんですね」。179ページには麻倉さんのオーディオルームの写真が載っている。大きな部屋にオーディオ機器がずらりと並び、壁の周辺は書棚と、資料がうずたかく積まれている。さすがオーディオ評論家だ、と感心することしきり。その写真説明を読んで、ますます、麻倉さんの内面が好きになった。「あえて片付けない著者のオーディオルーム」とある。良い知恵を授かりました。さっそく、試してみます。(BCN社長・奥田喜久男)