▼彼の名前に敬称をつけることは似つかわしくないだろう。ロックバンド「RCサクセション」の忌野清志郎が旅立った。40~50歳代世代にとっては、かのボブ・ディランやジョン・レノンを投影したカリスマだったに違いない。昨年7月、「徹子の部屋」に出演した際に、「戦争はなぜ止まないんですかね」と、下向き加減にポツリと語る姿が印象に残る。真っ正直な発言が苦手なふうだった。

▼清志郎は、米国のソウル歌手、オーティス・レディングなどに影響を受けたと聞く。促音を発する歌い口だけでなく、ソウル音楽に込められた反骨心を受け継いだ。はちゃめちゃな化粧に破天荒なステージ。一見すれば不良で、支持しがたい。だが、「反戦・反核・反原発」、あるいは反体制の主張は国民に届いた。同じくガンで逝ったジャーナリストの筑紫哲也さんから、「ジャーナリズムの精神をもつ人」と称えられたほどだ。

▼1980年後半以降、清志郎が作詞・作曲した「COVERS」は原発問題がネックで、またパンク・ロック風に歌った「君が代」などが所属レーベルから出せない出来事が相次いだ。極度の誹謗中傷や国民・国家を侮辱する表現があったわけではない。清志郎の影響力を心配した「無用な配慮」が働いたためだ。平和ボケした日本。インターネット上では、初めてその存在を知った多くの若者が、58歳の若さで逝った清志郎の死を惜しむ声が綴られた。社会問題に目を向けない日本社会を戒めるためにも、彼の死を無駄にしたくはない。