本のタイトルからは、日本の製造業が利益率を高めるためのスキルが書かれていると想像するが、そうではない。むしろ「利益率」といった会計数値に振り回されるな、というのが著者の主張である。例えば、日米の代表的企業の比較。2004年までの過去20年間、GM・フォードを合わせたROA(総資産経常利益率)/ROE(自己資本利益率)の平均は、トヨタ・ホンダのそれを常に上回っていた。だが、破産の危機に陥って政府の支援を受けているのはどちらの企業なのか、と読者に質問を投げかける。

 だからといって、日本の製造業に問題がないわけではない。第一章では、儲けを損なう五つの要因が挙げられている。(1)儲かるビジネスモデルが、戦略的にデザインできていない、(2)SCMができていないため、無駄な在庫や生産能力を持ってしまう、(3)儲けを損なう管理指標を設定している、(4)製品に経営資源を集中し、儲かるアフター分野をおろそかにしている、(5)ITが利益に貢献せず、金食い虫になっている──というのだ。

 IT業界の人には、とくに第五章「空洞化する製造業」に目を通していただきたい。ITのユーザーたる製造業が抱える問題点が整理されているからだ。例えば、「日本の製造業からは業務のエキスパートが消えつつあり、それをITで下支えしようとしたがうまくいっていない」などである。ITベンダーにとっては耳の痛い指摘もあるが、ユーザー満足を追求するために、一読をお奨めする。(止水)

『なぜ日本の製造業は儲からないのか』
石川和幸著 東洋経済新報社刊(1600円+税)