BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則』

2010/11/04 15:27

週刊BCN 2010年11月01日vol.1356掲載

 野球部の女子マネに読まれ((C)岩崎夏海)たりして復権著しいドラッカーは、経営の神様。こなたコトラーは、マーケティングの神様だ。近代マーケティングのバイブル『マーケティング・マネジメント』は、1967年の第一版以来、さまざまな冠を付けながら信者を増やしてきた。今回の共著者はインドネシアのマーケッターたち。確かにブランディングは大切だ。

 マーケティングの新しいコンセプトは、ビジネス環境の変化に伴って現れる。著者たちは「マーケティング3.0」への変化を促した要因として、景気後退、地球環境への懸念、ソーシャル・メディアの登場と消費者の影響力の増大、新技術の登場、そしてグローバル化を挙げる。モノを売るための1.0、顧客満足を目指す

 2.0に対して、3.0は「協働・文化・精神」を軸とした人間中心のマーケティングだという。もちろん、1.0から3.0に至る過程で得た知見は、理論構築の大前提。帯にある「消費者志向はもう古い!」などということは、実はない。

 3.0の着目点の新しさは、生産から流通、消費に至る縦の関係ではなく、消費者同士、あるいは消費者と生産者の協働によるブランディング、生産者同士のパートナーシップ、そして社員や株主へのビジョンの提供という横、あるいは斜めの関係にマーケティングとして正面から向き合ったこと。成熟した市場で、マーケッターに突き付けられた課題に対して、著者たちは無難なマーケティングから挑戦のマーケティングへの移行を強く呼びかける。(叢虎)


『コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則』
フィリップ・コトラー/ヘルマワン・カルタジャヤ/イワン・セティアワン 著 朝日新聞出版刊(2400円+税)
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