【鬼怒川発】週末に日光沢温泉に行った。この秘湯は栃木県の日光にある。夜の露天風呂で、空を見上げると、満天の星という。残念ながら当日は曇り空で、話だけを味わう。この温泉は、歩かないとたどり着けない。渓流に沿った山道をおよそ2時間歩く。東武鉄道の鬼怒川温泉駅から西の山奥に入った辺りだ。山では紅葉が始まっている。遠くに見える山肌は広葉樹が水玉模様のようにカーキ色に染まっている。きれいだ。ため息が出る。近くの風景は色とりどりトンネル状態だ。歩くたびに、光の加減で、色合いが変化する。なんて繊細な変化なのだろう。

▼鬼怒川温泉郷には久しぶりに訪れた。根津駅から地下鉄で北千住駅に行き、東武線に乗り換える。このまま乗っていれば、終点が鬼怒川温泉だ。鬼怒川には温泉がある。徳川幕府が作った日光がある。山と川が織りなす景色もいい。観光の条件が揃っている鬼怒川温泉は、昔から栄えてきた。が、訪れるたびに街は寂れてきた。今回は8年ぶりだ。お目当ては秘湯とその奥にある鬼怒沼の草紅葉だから、鬼怒川温泉街にはあまり期待もしなかったが、訪れてみたら少し様子が違う。何だか、きれいになっているのだ。活気のある気配がする。

▼旅の道連れは、山仲間のだんご三兄弟だ。東芝関係者の高橋文男さんと真木明さんである。同じ年に社会人になって、同じIT業界に身を置いて、違う風景のなかで39年間働き、還暦を過ぎてから、半年に一度は山を一緒に歩いている。何げない会話のなかに新たな物の見方を教えられる。「そうかな」に続く言葉を反芻すると、いつもハッとさせられる。今回は“お仕置き”という言葉を学んだ。責任と権限のなかで生き抜いてきた仲間に誇りを感じた。鬼怒沼の草紅葉は今が見頃です。(BCN社長・奥田喜久男)

あいにくの曇天だったが、山は紅葉が始まっていた