BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『Windowsの時代は終わったのか』

2011/07/21 15:27

週刊BCN 2011年07月18日vol.1391掲載

 雑誌を中心に、長年パソコンとかかわってきたライターが書いた「歴史書」である。話はコンピュータのOSが生まれる1950年代から始まる。マルティックス、UNICSの60年代、UNIXとALTOOS、CP/Mから始まった70年代は、76年のアップルIでパーソナルコンピュータの幕が開き、ハードウェアとしては、78年の日立のベーシックマスターレベル1、シャープのMK-80K、79年のPC-8801発売へと続いていく。そして81年、マイクロソフトのMS-DOS1.0、85年のWindows1.0 1登場からが、本書の白眉。90年代に入ると、ユーザーの選択基準は「どのハードウェアを選ぶか」から「どのOSを使うか」に移っていき、OSは全盛時代を迎える──。

 パソコンは、製品としてコモディティ化の歴史を歩んできた。普及とともに製品の個性は薄れ、差異化特性がなくなり、できることはそう変わらなくなっていった。端末の利用目的によっては、タブレットやスマートフォンのほうが合目的性が高い。著者は、OSもまた同じ道を歩んでいるという。クラウド化の流れのなかで、これまでOSが担ってきた役割はウェブブラウザへと移り、アプリケーションが端末の選択基準となっている。

 半世紀の「歴史」しかないOS。その進化の過程は、確かにIT業界の誕生と進化の歴史だった。OSは、なくなることはない。しかし、これからも歴史の具現者であるかどうか。少なくとも、これまでのかたちのOSは役割を終えたと著者は断言する。(叢虎)


『Windowsの時代は終わったのか』
阿久津 良和 著 毎日コミュニケーションズ刊(830円+税)
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