旅の蜃気楼

韓国の“勢い”をこの目で見た

2012/01/05 19:47

週刊BCN 2012年01月02日vol.1413掲載

【釜山発】船が港に近づくと、見える見える、遠くからでも大きく見える。近くで見上げると、ガントリークレーンは驚くほど背が高くて巨大だ。船はこの装置でコンテナの積み替えをする。私の乗った船はさらに釜山港に近づく。するとクレーンの数はもっと増え、周囲にはコンテナの山ができている。少し殺伐とした印象だが、なるほどこれが世界のハブ港なのだ。世界から荷を集めて積み替えをして、世界に荷を送り出す釜山港トランシップの全容が目の前に迫ってくる。

▼釜山港には博多港から高速船のBEETLE(ビートル)に乗って向かった。ビートルは、博多港を出て沖合の島々を左右に見ながら走る。こんなに多くの島々があるのだ、と新鮮な驚きを感じながら大海原に出て行く。そのうちに海しか見えなくなって、居眠りをしたようだ。目を覚ますと、左手にほのかに島が霞んで見える。ここが朝鮮通信使を育てた雨森芳洲が活躍した舞台の対馬なのだ。日本経済新聞に連載された『韃靼の馬』(辻原登著)のストーリーを思い浮かべながら、遠目に島を見た。日韓の距離は近くて、歴史は長い。

▼釜山港の船着場から30分ほど歩くと、釜山駅が見える。ここから高速鉄道に乗ると、2時間40分でソウルに着く。おおよそ東京─大阪間の距離だ。ソウルにはサムスン、LGといった大手のデジタル機器メーカーが本社を構えている。いずれも世界を視野に入れて事業を展開している。韓国は消費市場としては小振りだが、“ものづくり”の競争相手としては最も手強い。とくに21世紀に入ってから、韓国の企業は日中韓の土俵のなかで横綱の位置を確保しつつある。この勢いが衰える気配はない。日本市場でも受け入れられ始めた。侮れない勢力だ。2012年の台風の目になりそうだ。(BCN社長・奥田喜久男)

世界のハブ港を象徴する巨大なガントリークレーン群
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