旅の蜃気楼

釜山港へ帰るのではなく行ってみた

2012/01/12 19:47

週刊BCN 2012年01月09日vol.1414掲載

【釜山発】私が会社を起こす以前、カラオケでよく歌っていた当時のこと。気のきいたカラオケボックスなどはまだなくて、下町の居酒屋とかバーで歌っていた頃だ。「曲は何にしますか?」。待ってましたとばかりに、「無法松の一生、あんこ入り」。前奏が流れ始めると気分が富島松五郎になっていく。ぱらぱらと義理の拍手をもらって、次の人にバトンを渡す。いい気分になって、席についてまた飲み直す。新しい曲がかかった。おや!? この歌は初めて聴くぞ。「トラワヨ~プサンハンエー」。いい曲だな。歌のタイトルが気になった。後日、『釜山港へ帰れ』というタイトルだとわかった。真似をして唄ううちに、いつの間にか、持ち歌になってしまった。九州に出張した折、カラオケでこの歌を唄うことになった。同席した人が、釜山港まで高速船が就航したことを教えてくれた。いつか行こうと思っていて、昨年末に実現した。

▼博多港に入ってみると、就航20周年と書いてある。待合室には大きな荷物を持った人、携帯電話で話す人。韓国語と日本語が入り交じっている。釜山港に到着すると、日本語対応が完備している。港から地図を見ながら国際市場まで歩いた。ロッテデパートがある。歩きやすい街だ。

▼国際市場の細い道の両側には、衣料品店や鞄屋が立ち並んでいる。食堂街もある。右に曲がったり左に曲がったりで、迷路を歩くようだ。御徒町のアメヤ横丁を歩いている気分になる。衣料品店に入った。「膝下まである靴下ありますか」「これでしょ。6足、1000円」。商談がまとまって、店の女主人と記念撮影をした。御徒町と博多と釜山が地続きのように錯覚しそうだ。次は築地市場のような釜山市民の台所である「ジャガルチ市場」に出向いてみよう。日中韓が一つの土俵にみえてきた。(BCN社長・奥田喜久男)

釜山の国際市場。靴下の商談が成立して、女主人と記念撮影。なんだか、アメ横の雰囲気だ
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