大手電機メーカー幹部の方々と話をするたびに出てくる言葉が、「うちは技術ならある」「技術では負けない」。AppleやSAMSUNGなどのヒット商品との差を突っ込まれて、苦しまぎれに出た言葉なのかも知れませんが、これが1社や2社だけではないことに、大いに違和感を覚えます。
捉えようによっては、「技術はあるので、やろうと思えばいつでもできる」、つまり、ネットで話題の言い回しを借用すれば「明日から本気出す」。こんなふうに聞こえてしまうのは、聞き手の根性が曲がっているからでしょうか。
「スマイルカーブ」という言葉があります。製造業で上流の「マーケティング・設計」と下流の「販売・サポート」だけを自ら行い、真ん中の「製造工程」は、人件費の安い海外へアウトソーシングするというものです。
最初と最後の価値が高く、真ん中が低くなる“スマイル曲線”を描くのが言葉の由来ですが、Appleが自ら製造設備をもたず、鴻海をはじめとする大手EMS(電子機器受託生産サービス)に委託しているのと同じ構造です。
ただし、製造工程は極めて高い雇用増大効果を生み出します。米国では、主に中国で100万人単位での雇用を生み出している電機業界を疑問視する声もあるといいます。
実は、日本の電機メーカーが「明日から本気出す」と言い続けて、二の足を踏む理由の一つがこの雇用にあります。なんだかんだ言っても、日本には企業の存在価値を雇用に見出す経営者が多いのです。
振り返って、情報サービス業でも、中国へのオフショアソフト開発は、伸びるどころか全体的に停滞感が強まっており、先ほどの製造業と同じ雰囲気が漂っています。「明日から本気出す」の“明日”は、日本に訪れるのでしょうか。(安藤章司)
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