BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『外交プロに学ぶ 修羅場の交渉術』

2012/12/27 15:27

週刊BCN 2012年12月24日vol.1462掲載

 あらゆる交渉のなかで、国と国の交渉、すなわち外交は、高度なスキルを要求されるものの最右翼といっていいだろう。北朝鮮は、12月12日、延期と発表しながら、突如、ミサイルを発射した。12月13日には中国の航空機が尖閣諸島の領空を侵犯した。こんな虚々実々の駆け引きのなかで交渉が行われる。

 今回取り上げるのは、交渉のプロともいうべき外交官の言い回しや、文書の読み方・書き方をビジネスの現場でも有効に活用しようという趣旨の本である。著者は、日本経済新聞社で外交・安全保障を担当する特別編集委員の肩書きをもつ人物だ。

 交渉のコツ、その1。「べき」を使うな。「何々すべき」の意味には「自明(当然)」と「主観」が入り交じっているので、話がかみ合わない。そうするのが当然と自分は思っていても、相手は単なる主観と受け取る。これでは交渉が不成立に終わってしまう。

 その2。「全文を見てから」を徹底せよ。不確かで断片的な情報をもとにした判断は、交渉を間違った方向に導く危険がある。とくに外交では、一つひとつの言葉に重要な意味があり、微妙なメッセージが込められているので、文書や発言のすべてを把握したうえで交渉に臨むことが大切だ。

 以下、「たった一文字が命取り」「あえて逆説を持ち出そう」「真理は中間にあり」など、全部で12の項目がエピソードとともに解説してある。交渉のコツを身につけるための一冊として推薦する。(仁多)


『外交プロに学ぶ 修羅場の交渉術』
伊奈久喜 著
新潮社 刊(680円+税)
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