BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『日本人にマネできないアジア企業の成功モデル』

2013/03/28 15:27

週刊BCN 2013年03月25日vol.1474掲載

 『週刊BCN』の連載「視点」の執筆者の一人、増田辰弘氏が共著で上梓した新刊である。氏の肩書きは「アジアビジネス探索者」で、現地のビジネスに造詣が深い。強みは自らの足でアジアを歩き回り、ビジネスの実際を直に見聞しているところにある。だからこそ、記述されている内容に迫力が感じられる。

 第一章では、台湾企業、韓国企業、香港企業、中国企業それぞれのビジネスモデルを明らかにしている。例えば、台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)。『日本企業が手をつけず、中国企業ができない「隙間経営」モデル』として紹介されている。電子機器受託製造サービス(EMS)事業で急成長した企業で、米アップル社のiPhoneを受託生産したことが、同社を世界的に有名にした。

 特徴的なのは、部品の調達方法だ。部品会社はホンハイの工場構内に倉庫を賃借して、在庫する。そして、ホンハイは必要なときに必要な量の部品を購入するという仕組みである。トヨタのかんばん方式をもっとドライにした取引関係を構築しているのだ。部品会社にとってはかなり厳しい取引条件になるが、「ホンハイと取引していれば、世界の動きがわかる」というメリットがあるので、離れていかないそうだ。

 第二章以降は、アジアを拠点にして活躍する日本の中堅・中小企業の紹介。新天地を求めてアジアに進出して予想外の障害に阻まれたものの、それを乗り越えた経営者の実体験などが生々しく語られている。アジアビジネスの実像が読める好著である。(仁多)


『日本人にマネできないアジア企業の成功モデル』
増田辰弘・馬場隆 著
日刊工業新聞社 刊(1500円+税)
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