▼長い長~い間、社長業をしてきた。1981年8月18日、東京は大塚三業地の四畳半の一室で創業して以来だから、32年になる。この間の時の流れは、私の人生のちょうど半分に相当する。この時間軸は、自分の半生を振り返るのに都合がいい。使用前、使用後ならぬ、起業前、起業後だ。起業する時に今の状況を想定したかといえば、そんなことはありえない。未来はいつも夢の中に存在する意(おもい)だからだ。

▼未来は予見できないものではあるが、起業後に一つだけ自分に言い聞かせて、思い続けたことがある。それは、「新聞を出し続けよう。その発行を通して、パソコン業界の今と日本列島47都道府県のパソコン市場の成長を見続けよう。パソコンは人の生活を変える文明の利器だから、ハードとソフトの進化の過程を見続けよう」というものだった。いくたびかの苦難は、歯を食いしばって乗り越えてきた。

▼始末が悪いのは、ちょっとした成功の美酒に酔い痴れて、滑って転んで痛い目にあったことだ。喜怒哀楽を繰り返すうちに、いつの間にか64歳の誕生日を迎えた。時折、記憶が飛ぶことがある。最近はその頻度が増してきた。少し盛り上がり過ぎて深酒をした時には、さらにからだが動かない。それなら品行方正に徹すればいいではないか、と自分に言い聞かせるものの、私はそんなに聞き分けのいいタイプではない。

▼創業者は事業に対する意が強い。その力はプラスにもマイナスにも作用する。この力も始末が悪いが、32年の事業の継続を中間決算すると、トータルプラスであったと自己採点している。が、からだは老いる。そこで事業承継を考え始めるものの、なかなか手放せない。複数の条件が環境と共に整っても、決断する際にはイジイジした。ある日、予期せぬ第三者の強烈な一言で決めた。(つづく)(BCN会長・奥田喜久男) 

四畳半のアパートでスタートを切った。『BUSINESSコンピュータニュース』の有料購読部数が100部となった日、「100」と記したメモをくわえて喜びを表現した


※長い間書き続けた私のコラム『旅の蜃気楼』の休載から、半年余りが過ぎました。4月1日付で株式会社BCNの会長に就任したのを機に、再びいろいろな思いを綴ります。旧倍のご愛読をよろしくお願いいたします。

2013年4月9日記