BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『出雲大社の巨大な注連縄はなぜ逆向きなのか?』

2013/09/26 15:27

週刊BCN 2013年09月23日vol.1498掲載

 今年は遷宮の当たり年。20年ぶりの式年遷宮に沸く伊勢神宮、そして実に60年ぶりの遷宮でブームを巻き起こしているのが出雲大社だ。社伝によると、本殿の高さは16丈(約48メートル)だったそうだ。神代の技術で本当にそんな高層建築が可能だったのだろうか。その事実を裏づける考古学的発見が2000年(平成12年)にあった。発掘調査で、地中から直径1メートル以上もある大きな柱の根本が3本まとめて発見され、俄然、現実味を帯びてきたのだ。

 参道を歩いて拝殿に向かうと、巨大な注連縄(しめなわ)が目に飛び込んでくる。長さ8メートル、周囲4メートル、重さは1.5トンもある。これよりもさらに大きな注連縄が神楽殿にあって、こちらは長さ13.5メートル、周囲9メートル、重さ4.4トンで、日本一巨大なものだ。実はこの注連縄、ほかの神社とは逆方向に綯(な)われている。理由については諸説がある。出雲大社は、西側にある海と関わりが深く、西(向かって左)が大切にされるからという説がその一つ。祀られている大国主神の神霊の力があまりにも強く、本殿から神霊が出ていかないようにしているのだという説もある。

 そのほか、「出雲大社だけが、なぜ大社と呼ばれたのか」「本殿はなぜ三重の垣に囲まれているのか」など、古代史の謎に迫る。

 旧暦10月は神無月だが、ここ出雲では神在月(かみありづき)と称する。八百万の神様が集まって縁結びの会議を行う地に想いを馳せるのも一興だ。(仁多)


『出雲大社の巨大な注連縄はなぜ逆向きなのか?』
久能木紀子 著
実業之日本社 刊(762円+税)
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