BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『SE不要論』

2014/12/25 15:27

週刊BCN 2014年12月22日vol.1560掲載

「不要論」とした著者の見識を疑う

 刺激的なタイトルとは裏腹に、内容は非常に薄い。著者はSEのことを知らないのではと思えるほど、見識を疑いたくなる「不要論」が展開されている。しかも、取材したSIerは、たったの一社。よく一冊の本を書き上げたものだ。タイトルが気になって購入してしまっただけに、売り手の思惑にハマったという敗北感すらある。

 本書がSEを不要とする理由は、こうだ。「IT市場の成長が鈍化」「オフショア開発で人件費低下」「顧客の指示を待つ受け身体質」「融通が利かない専門家気質」「技術革新についていかない」。いかがだろうか。なかには該当するSEもいるだろうが、本書ではいかにもすべてのSEがそうだといわんばかりに「従来型SE」とくくっている。そもそも、SEを不要とする理由としておきながら、問題がIT業界全体にあるのか、SIerにあるのか、SEにあるのかがはっきりしない。SEの定義はそもそも曖昧なものだが、プログラマと混同していると思われる論調も散見される。

 著者は、生き抜くために「未来型SE」を目指せという。ここに有益な情報があればよかったのだが、その内容が輪をかけてひどい。「新技術のいち早い習得」「営業力」「コミュニケーション能力」「リーダーシップ」「創造性」「本業と別の分野を組み合わせる」「国内完結型ビジネスからの脱却」などを身につけるのが、未来型SEだという。残念ながら、従来型SEが取り組んできたことそのものである。読んで思った。著者が唯一取材したITベンダーの宣伝用ではないか。腹が立つ。(亭)


『SE不要論』
市川 徹 著
幻冬舎メディアコンサルティング 刊(1300円+税)
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