市場としての中国は魅力に溢れる

 日本銀行で北京事務所の所長を務め、日銀退職後はキヤノングローバル戦略研究所の研究主幹として中国をウオッチし続ける人物が上梓した本。著者自身を含めて、中国に駐在する日本のビジネスマンが帰国して、書店へ行くと、心が痛むという。店頭に並ぶ中国関係の書籍の大半が、反中・嫌中意識を丸出しにしたタイトルをつけたものだからだ。

 一番の問題は、書籍や週刊誌などの反中・嫌中の論調に引きずられて、日本本社の経営層がネガティブな考え方にとらわれるようになり、中国の駐在員の意見を軽んじたり、無視するようになることだと、著者は警鐘を鳴らす。中国には、支払いを先延ばしにされる、知的財産権を侵害される、政策・制度が突然変更されるなどのビジネスリスクがあることは否定できない。だが、世代交代が進むにつれて、中国の商慣習は変わりつつあるし、何よりも巨大な消費市場は魅力たっぷりな宝の山であるというのが、著者の言いたいところだ。

 中国が好きか嫌いかというエモーショナルな話ではなく、マーケティングの見地から中国という市場をどう捉え、いかにビジネス展開していくべきかの指南書というべき本である。「中国、特に地方における日本企業の存在感は年々高まっている。短期で撤退することなく、現地の人材育成に力を注ぐ──。そんな日本企業を、雇用と税収を支える存在として高く評価しているのだ」。中国の発展は日本の発展であり、日本の発展は中国の発展であるという著者の主張に一理を見出すことは、そう難しいことではない。(仁多)


『日本人が中国を嫌いになれないこれだけの理由』
瀬口清之 著
日経BP社 刊(1800円+税)