BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『Google vs トヨタ』

2015/02/26 15:27

週刊BCN 2015年02月23日vol.1568掲載

イノベーションとは破壊である

 深夜まで飲み歩いていたら、終電を逃してしまった。タクシーで帰ろうとするも、なかなかつかまらない。そんなときに思う、「マイカーが迎えにきてくれたら」と。実現すればまさに“夢のマイカー”となるが、自動運転車の破壊力はそんなものではない。妄想してほしい。

 まず、運転免許が不要になる。運転という行為が不要になる。自動車保険、タクシーの運転手、監督官庁、道路交通法違反者、地方の電車やバス、買い物難民向けの移動スーパー……、みんな消えていく。「自動運転車は、世の中の仕組みそのものを変えるきっかけになる」と、筆者は考える。それは「なぜ、グーグルが自動運転車に取り組むのか」の答えでもある。

 そして、もう一つ消えそうなのが、自動車メーカーだ。グーグルによって自動運転システムが完成すると、自動車はそれを動かすためのハードウェアとしてコモディティ化が進む可能性がある。すると、自動車メーカー各社がもっている独自技術は存在意義をなくし、安く大量に自動車を作れるメーカーが台頭することになる。にわかには信じがたいが、筆者は携帯電話(フィーチャーフォン)がスマートフォンへと切り替わるなかで、プレイヤーが一気に変わったことを例に挙げて、自動車業界においても同様のことが起きるとしている。

 そのグーグルに資金力で対抗できる国内自動車メーカーが、トヨタ。本書のタイトルが「Google vs トヨタ」なのは、そのためだ。トヨタはグーグルに勝てるのか。興亡をかけた戦いは、すでに始まっている。(亭)


『Google vs トヨタ』
泉田良輔 著
KADOKAWA 刊(1400円+税)
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