ITエンジニアが描くSFミステリー

 テロリストとの戦い。警察が血眼になって犯人を追う。狙われる政府中枢──。ここまでなら、よくあるSFミステリー小説なのだが、本書の主人公は、ごく平凡なシステムエンジニアの女性。ひょんなことから国をあげての事件捜査に巻き込まれていく。

 登場する技術は、すでに実用化されているデータ分析の手法や、公開されているOSS(オープンソースソフト)のAI(人工知能)モジュールなどの馴染みのあるものばかり。しかし、それが非常に強力な武器となって、事件の真相に迫っていく。

 SFミステリーなのに、妙にリアル。それもそのはず、執筆者は新日鉄住金ソリューションズの有志4人で、著者の「大隆哲裕」は、4人の名前から一文字ずつとったペンネーム。主人公の所属するSIerは、その名も「アイアン・ソリューションズ」だ。SI業界で働く人にとって身近な現実と架空が交差する、ある種のギャップと快感を味わえること間違いなしである。(寶)
 

『A/Identify──アイデンティファイ』
大隆哲裕 著
幻冬舎 刊(1300円+税)