下戸でも「酔える」本

 「酒は人間を映し出す鏡である」

 古代ギリシアの詩人が残した言葉だそうだ。酒は飲んだ人が心に秘めていることを露わにしてしまう。よくも悪くも、2500年以上も前から人と酒のかかわり方というものは変わっていないらしい。
 

 本書はロックバンド「MO'SOME TONEBENDER」(モーサム・トーンベンダー)のフロントマンである百々和宏氏が、音楽誌「音楽と人」で連載中のエッセイをまとめたもので、シリーズ第4作となる。酒や酒場、音楽仲間や飲み仲間にまつわるエピソードを面白おかしく、ときには感動的に描いている。筆者の酒や音楽、そして人に注ぐ温かい眼差しが感じられ、ページを開くたびに、心に灯りがともる感覚を覚える。

 酒が自分を映す鏡だとすれば、その鏡と向き合う行為は苦痛を伴うこともある。酔いが回り気持ちよくなっていたはずが、なぜだか急に現実を突きつけられた気がする……。そんな体験をした酔っ払いも少なくないだろう。けれども、自分をさらけ出すことも決して悪くないのかもしれない。酒とともに喜怒哀楽を吐き出すような文章を読みながら、そんなことを考えた。

 酒場も音楽業界も新型コロナ禍で傷を受け、今もなおその痛手は癒えていない。苦境に直面しながらも、たくましく生きる人たちの姿も収められ、時代の空気を感じさせる一冊にもなっている。酒が苦手な方も、酒飲みが嫌いな方も、きっと楽しく「酔える」本である。(無)


『泥酔ジャーナル4』
百々和宏 著
FUZZY PEACH発行 UK.PROJECT販売 2200円(税込)