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ソニー、E3で勝利宣言 PS2、他ゲーム機を圧倒

2002/06/03 18:45

週刊BCN 2002年06月03日vol.943掲載

 

 今年も米ロサンゼルスで世界最大のテレビゲーム見本市「エレクトロニクス・エンタテインメント・エキスポ(E3)」が開催された。これに先立ちテレビゲーム機メーカーのトップが値下げを発表するなど、今年も波乱含み。IT業界のなかでも最も競争が激しいといわれるゲーム業界の今後の行方はどうなるのだろうか。

 「戦いは終結した」――。ソニー・コンピュータ・エンタテインメント・アメリカの平井一夫社長は基調講演で高らかにこう宣言した。

 E3を前にマイクロソフトとソニーは、Xboxとプレイステーション2(PS2)の米国内価格をそれぞれ199ドルに値下げ。任天堂はゲームキューブを149ドル95セントに値下げし、激しい価格競争を印象づけたばかり。

 それでもソニーが勝利を宣言したのは、売上台数で他社を圧倒しているから。平井社長によると、PS2は世界中で3000万台を販売、今会計年度中にさらに2000万台を販売する見通し。一方のXboxとゲームキューブはそれぞれ400万台程度しか売れていないという。

 マイクロソフトは時代の読みを間違ったという見方がある。Xboxはブロードバンド対応に最も力を入れているが、ブロードバンドを利用したオンラインゲームの普及は早くてもあと2、3年というのが業界関係者の支配的な見解。本格的ブロードバンド時代がまだこないのなら、ゲームタイトル数がゲーム機の優劣を決める。これがPS2の現状の優勢を決定的にした。

 ではブロードバンド時代になれば形勢はどう変わるのだろう。

 マイクロソフトはE3で、Xbox専用のオンラインゲームサービス「Xboxライブ」の開始時期を今秋中に発表することを明らかにした。同サービスは有料の専用回線網で、サーバー管理、顧客管理、セキュリティ、課金などのインフラ部分を同社が担当するという。

 一方、ソニーと任天堂は、ユーザー自身のインターネット接続をそのまま利用できるサービスにする。マイクロソフトはクローズド、ソニー、任天堂はオープンな環境というわけだ。

 マイクロソフトのネットワークでは、インフラ構築の心配がない。ゲームメーカーはゲーム開発に専念できるというメリットがある。一方、既にインフラをもつゲームメーカーにとっては、利用料を支払わなくていい分、ソニーや任天堂のサービスの方が魅力的だ。

 注目すべきは新社長を迎えた任天堂の今後の戦略。現時点ではゲームキューブは十分な強さを発揮しているが、その一方でローティーン向けのニッチゲーム機というイメージが定着しつつある。ブロードバンド時代という新戦場で現在の戦略を維持すれば、シェアが縮小する可能性もある。ソニー、マイクロソフトとの首位争いに再び果敢に挑戦するのか。堅実にニッチプレーヤーの道を選択するのか。新社長の手腕の問われるところだ。

 ゲーム業界は、昨日の勝者が今日は撤退を余儀なくされるという産業界の最激戦業界。マイクロソフトはXboxやその後継機で天下を取るために20億ドル(約2500億円)という膨大な軍資金を用意している。戦いは、終結するどころか、今後ますます激化することになりそうだ。(湯川鶴章)
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