店頭流通

デル、ホワイトボックス参入

2002/09/09 18:45

週刊BCN 2002年09月09日vol.956掲載

 米デルコンピュータがホワイトボックス市場に参入した。この市場が着実に拡大しつつあることから、参入することで売上高を伸ばすのがデルの狙い。直販メーカーの先鋒デルが、チャネル販売で業績をどの程度上げられるか、注目される。

499ドルという低価格で提供

 米ハイテク調査会社IDCによると、世界のホワイトボックス市場は800万台、30億ドル。緩やかな成長ながら、過去5年間で世界のパソコン市場の30%を占めるほどになっている。

 ホワイトボックスは地元に根付く中小や零細の販社がメンテナンスなどのサービスを目玉に販売するノーブランドパソコン。このため販売台数の集計が困難で、これまでIDCはホワイトボックスの販売台数を統計に含んでこなかった。しかしホワイトボックス市場が確実に拡大していることから2001年度から統計に加えたもので、ホワイトボックスの数字が加えられた分、大手パソコンメーカーのシェアは下方修正されることになった。

 デルが発売したホワイトボックスは、「ホワイトボックスD510」と呼ばれる機種。CPUにインテル・セレロン、OSにウィンドウズXP、CD-ROMドライブ、フロッピーディスクドライブを搭載、1年間の保証と電話サポート付で499ドルという価格。デルの直接販売ではなく、各地の販社に卸していく。

 デルによるとホワイトボックスを販売する販社の6割は、格安部品を自社で組み立てるというこれまでのやり方から、完成品に近いものを販売するという手法に移行している。低価格で性能がよければデルの製品が販社に受け入れてもらえるというのが、デルの読みだ。

 デルによると、ホワイトボックスもBTOで製造。収益率も通常の製品と同等に設定する。また販社には2-3%のマージンや、月賦、リースなどの選択肢も提供する考え。初年度の売上高は、全社売上高の1%である3億8000万ドル以下を見込んでいるという。

 デルはパソコン市場の40%のシェアと売上高600億ドルという目標を2、3年以内に達成する計画で、目標達成のためにはホワイトボックス市場でも業績を伸ばしたいところだ。

 ただし、ホワイトボックス向けの部品メーカーは、台湾メーカーなど価格競争で実績あるところばかり。499ドルを下回るパソコンの組み立てが可能な部品を作ってくることは間違いない。またデルのホワイトボックスは、デルの中小企業向け製品とバッティングする可能性がある。

 しかしハイテク調査会社フォレスター・リサーチは、デルのホワイトボックス参入を「賢明な動き」と評価している。たとえアジアのメーカーであっても、デルのスケールメリットを利用して製造する高性能・低価格機種を超えるパソコンを製造するのは困難というのがその理由。また、ホワイトボックスを購入するユーザー企業は、デルの中小企業向け営業で攻略しきれていない層で、バッティングの可能性はないとしている。(湯川鶴章)
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