店頭流通

使えるぞ、タブレットPC 広がる手書きの世界

2002/09/30 16:51

週刊BCN 2002年09月30日vol.959掲載

 11月7日のタブレットPC発売まで、いよいよ残すところ約1か月となった。今年最後のビッグプロダクトともいえるタブレットPCは、「デスクトップパソコンがノートパソコンという形に進化したのと同様、新たなパソコンの進化を遂げるもの」(マイクロソフト)と位置づけられる製品だ。その進化はどんな点にあるのか。発売前のタブレットPCを実際に試用して、その進化を体験してみた。

広がる手書きの世界

■ワードをペン入力で

 今回の試用レポートには、マイクロソフト ウィンドウズXP タブレットPCエディション日本語版を搭載したソーテック製のタブレットPC試作機を使用した。同製品は、いち早い製品投入が予定されているモデルの1つである。

 何といっても、タブレットPCの最大の特徴は、ペンで入力ができる点だ。 マイクロソフトでは、オフィスXPのアドオンソフトとして、オフィスXP パック フォー タブレットPCを無償でダウンロードできるようにしており、ワードなどで手書き入力ができるようになる。例えば、スタートアイコン横に表示されるアイコンをクリックすると、ワードなどでペン入力変換ができる。

 ペンによる入力方法は、ソフトキーボードによるペン入力と、実際に手書き入力を行う方式とが選択可能。ここでは、手書き入力を選択してみた。

 マス目のなかに、漢字、ひらがな、カタカナを書いてみると、その認識率はかなり高い。パソコンに不慣れな高齢者にチャレンジしてもらったところ、最初は思うような入力ができなかったが、5分もすれば、ほぼ的確に変換できるようになった。

 キーボードに不慣れな初心者が1つのターゲットともいえるタブレットPCだが、その目的をほぼ達成できるだけの変換効率と入力インターフェイスとなっている。

 英文については、マス目を使用しなくてもそのまま書けば変換してくれる。かなり雑な書き方をしても、認識してくれる点は驚きだ。

 ワードへの入力は、ペン入力によるテキスト変換だけではない。実際にワードの文書に手書き文字を書き込むことができる。

 ワードの場合は、あらかじめ手書き入力するスペースを2種類の形式で指定することが可能で、そこに手書き文字を書き込むことができる。

 今回のバージョンでは、手書きスペースの指定が必要で、まだワードの文書には直接文字を書き込むことができないのが残念だ。

 パワーポイントは初期バージョンから、直接スライドショーに文字を書き込むことができる。 この利便性はなかなか高い。講演会の会場で、無線LANでタブレットPCにパワーポイントの資料を配布。聴講者はタブレットPCを使って、そのままパワーポイントの資料にメモを書き込む、といったことも実現できる。 エクセルに関しては、まだ対応していない状態であり、早期の対応が求められるところだ。

■手書き感覚でメモを

 ペン入力機能を最大限に生かすのが、「ウィンドウズ ジャーナル」である。 ノートタイプの画面に手書き入力ができるタブレットPC用に新たに用意されたアプリケーションで、ノートトップのタイトル部分がそのままファイル名として保存できる。

 ペンの太さを選択したり、色の選択やマーカータイプに変更したりといったことも可能。まさにノートに手書き感覚でメモをとる感覚だ。

 さらに、書いた文字と文字の間に別の文字を挿入する場合にも、簡単操作で余白を作ることができ、紙では実現できないような使い方も可能になる。

 さらに、同ソフトで作成した文書は、HTML形式に変換してメールとして送信でき、受信者はタブレットPCを利用していなくても、インターネット・エクスプローラーで閲覧することができる。

■新たな使い方に期待

 タブレットPCの特徴は、手書き文字を手書き文字として残しておくことにある。従来の手書き入力を前提としたデバイスは、テキストに変換することに力を注ぎ、変換率ばかりが争点となっていた。だが、タブレットPCは、手書き文字を手書き文字として残しておくという点がこれまでのデバイスとは大きく異なる。この点がマイクロソフトが「進化」と呼ぶ所以である。

 タブレットPC対応アプリケーションとして、16社のソフトベンダーが対応アプリケーションの開発意向表明を行っている。地図ソフトに手書きで道順と集合時間を書き込み、それをメールで配信――といった新たな利用が可能になったり、なかには、個人の筆圧や速度など手書きの癖を認証技術に応用するといったものも登場する予定だ。

 今回、何人かのパソコン初心者にタブレットPCを使ってもらった。その結果、「面白い」、「これは使えそう」という意見がほとんどだった。

 「手書きで書いている演奏のアドリブ部分のコードをタブレットPCを使って配信できたら便利」、「PTAの広報資料のやり取りの指示が手書きでできたらいい」など、ビジネスに限らず、いろいろな場面で威力を発揮しそうだ。

 パソコン初心者たちが今から楽しみにしているという点だけでも、タブレットPCは、パソコンが新たな「進化」を遂げたプロダクトになる可能性があるといえそうだ。
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