店頭流通

大型店v.s.郊外店 優位なのはどっち?

2002/11/18 18:45

週刊BCN 2002年11月18日vol.966掲載

 博多(福岡県)にオープンしたヨドバシカメラの新店舗は、福岡の商業の中心地区である天神ではなく、JR博多駅・筑紫口前に立地する。地元の知名度は予想以上に低く、ヨドバシカメラの名前だけでなく、新たな商業施設がオープンすること自体を全く知らない人が多かった。(三浦優子●取材・文)

 博多(福岡県)にオープンしたヨドバシカメラの新店舗は、福岡の商業の中心地区である天神ではなく、JR博多駅・筑紫口前に立地する。地元の知名度は予想以上に低く、ヨドバシカメラの名前だけでなく、新たな商業施設がオープンすること自体を全く知らない人が多かった。規模からいけば、既存のパソコン販売店、家電販売店を圧倒するだけのパワーをもっているものの、買い物に出向く人が少ない地域にどれだけ人を呼べるのか、新たな商圏を作る力がヨドバシカメラには求められる。

 「新たな商圏を作る」のは、かなりパワーがいる試みではあるが、この2、3年にオープンした大型店舗をみると、「新たな商圏を作る」ための努力をしているところが少なくない。ヨドバシカメラの大阪・梅田にオープンした店舗もまさに、新たに梅田に商圏を作ることができるのかという点が焦点だった。JR跡地の大規模再開発地域だっただけに、昨年のオープン時には地元での関心も高く、開店当日は大阪地区のほとんどのテレビ、新聞がこの店舗のニュースを取り扱った。単にヨドバシカメラだけの問題ではなく、大阪・梅田に新しい商圏ができるのか、そんな期待が高かったように感じた。

 昨年11月23日に、名古屋・大須地区に開店したグッドウィルの「エンターテイメント・デジタルモール」も同地区に人を呼び込む、大須という商圏の拡大を意識した店舗である。パソコン販売店としての規模もさることながら、レストランの併設や、1階の店舗部分に巨大招き猫を置くなど、まさにエンタテインメントな店舗で、月城朗社長は「大須自身の名所となるような店舗としていく」ことが狙いだとした。大須のような電気街は、大小さまざまな店舗の集積地だけに、街に人を呼び込むという視点よりも、店舗間競争が目に付きやすい。だが、それだけでは商圏としてのパワーに限界を感じたからこそ、グッドウィルは全く新しいコンセプトの店舗を開店した。まさに、「新たな商圏を作る」ことを狙った試みである。

 一方、新規店舗といえば、コジマ、ヤマダ電機に代表される郊外型店舗を積極的にオープンしている店もある。郊外型の店舗はすでに商圏があるベッドタウン近隣に新たに進出していくタイプで、新しい商圏を作るタイプの店とは全く異なるターゲットをもっている。各地域に店舗をもつ日本電気大型店協会(NEBA)に加盟する企業にとっては、「コジマ、ヤマダ電機は局地戦を仕掛けてくるだけに、大都市部に新店舗をオープンするカメラ量販店よりも、激しく競合していかなければならなくなるので厳しい」(NEBA・岡嶋昇一会長=エイデン社長)という声があがる。

 かつてNEBAに加盟する店舗は、ナショナルショップを代表とする地元密着型の小規模店舗を、規模で凌駕していったわけだが、コジマ、ヤマダ電機は全国というグローバル規模で彼らに戦いを挑んでいる。さらに、それとは別の陣営として、大都市部に規模の大きな店舗をもつカメラ量販店が勢力をもっているのが現在の状況だ。店舗間の競争といっても、ターゲットが異なるだけに得意商品、顧客層は異なる。1990年代、パソコンの売れ行きが絶好調だっただけに、どのタイプの店舗でもパソコン販売が伸びたわけだが、その状況はこのまま続いていくのかどうか――。店舗のタイプ別に、パソコンの販売動向を追っていく必要があるだろう。
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