店頭流通

<ショップの盗難防止事情>2 接客レベルの向上で盗難防止

2003/01/13 16:51

週刊BCN 2003年01月13日vol.973掲載

 万引防止装置を設置し、防犯対策を行うショップでは、商品パッケージの外側に貼付した防犯タグを剥がされるという事態が生じている。最近では、インターネットにより、さままざまな情報が収集できることで盗難の手口がますます複雑化しており、今後も盗難への被害が拡大していく危険性が高い。顧客の動きに一層目を向けることで盗難を未然に防ぐショップもある。メーカーがソースタギングの導入に難色を示すことや、万引防犯装置の普及率の低さなどの課題があるなか、こうした取り組みが接客レベルの向上にもつながる最適な盗難防止対策だといえそうだ。(佐相彰彦)

 現在、日本で主流を占めるパソコン本体の外側につける従来型の盗難防止タグは、特殊な工具で簡単に剥がされてしまう。

 日本電気大型店協会(NEBA)事務局の小林淳氏は、「パッケージの外側に防犯タグを貼付する方法は、店員が見えないところで剥がされてしまう。被害が多いのは、高額な商品に加え展示品が多い。展示品を盗難するのに鎖を切断しており、タグ貼付の効果がないのが現状だ」。万引防止装置とパッケージの外側に防犯タグを貼付するだけでは、盗難を防ぐことができないということだ。

 また、従来型の防犯タグでは、顧客が購入したにも関わらず、店員が防犯タグの解除を忘れてしまい、万引防止装置が作動してしまった、というトラブルが発生するケースもあり、顧客に悪い印象を与えてしまう可能性が高い。

 確実に盗まれないために、商品をショーケースに入れるショップもあるが、ショーケースの鍵番号をもとにした合い鍵が裏で出回っているケースが多く、店員の目を盗んで鍵を開けられることもしばしばある。

 かつては、「購入したくてもお金がなく、つい出来心で盗んでしまった」という盗難が大半だったが、最近では換金目的の盗難が急増している。インターネットの掲示板やチャットなどで情報が収集できるため、組織的な盗難集団だけでなく、一般の人でも巧妙な万引きの手口を行っているケースが多く、以前より手口が複雑化しているともいわれている。

 東京・秋葉原電気街では、月平均の被害額が1店舗あたり数十万円から数百万円ともいわれ、年間で億単位に達する計算。そのため、秋葉原電気街振興会では、盗難被害が多い年末年始に、ガードマンによる防犯パトロールを一層強化した。

 メーカーがソースタギングへの導入に難色を示すことや、NEBA加盟店のなかで万引防止装置を設置したショップが全体の30%という低い導入率など、さまざまな課題を抱えるなか、盗難を未然に防ぐことに取り組むショップもある。

 東京・八王子市を本拠地とする家電量販店のムラウチでは、「展示品は鎖で縛り、展示品の上から金属の棒で固定するなど、徹底的に盗難を防止している。だが、アクセサリー品は混雑していると盗難を防ぐのが難しい。店員の防犯技能を高めることが重要」(久島明・取締役本店店長)としている。

 盗難対策に積極的に取り組む九十九電機では、「万引防止装置が作動してしまった場合は、店内が忙しかったとしても必ず声をかけたほうがよい」(後藤大和・第一営業本部販売促進部長)という。これは、声をかけない現場を盗難の常習犯がみた場合、「この店舗は防犯体制が甘い」と判断するためだ。「防犯対策がきちんとしている店舗だと、来店客が意識すれば、盗難を未然に防ぐことが可能」(後藤部長)と強調する。

 これまで以上に顧客に目を向ければ、盗難防止に加え、接客レベルの向上にもつながるという相乗効果も生まれる。
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