店頭流通

ソフトの価格破壊、始まる ソースネクストの1980円戦略

2003/03/10 18:45

週刊BCN 2003年03月10日vol.981掲載

 ソースネクストが勝負に出た。3月末までに、主力のタイピング練習ソフトや教育ソフト、ウイルス駆除ソフトなど、16種類の商品を従来の半額近い1980円に順次値下げする。競合ベンダーは、「松田(憲幸ソースネクスト社長)さんはチャレンジャーだが、目論見通り上手くいくのか。1980円ソフトがどれだけ売れるか。お手並み拝見」と、冷ややかだ。(安藤章司●取材・文)

 ソースネクストの戦略は明確だ。(1)半額にして4倍売れば、金額ベースで2倍に増える、(2)「安いなら買ってもいい」という新規需要を開拓できる、(3)品揃えとシェアを大幅に高めることでブランド力を強める――。ただし、リスクは大きい。(1)一度値段を下げると、二度と戻せない、(2)半額にして2倍しか売れなければ、値下げした意味がない、(3)安物を売るメーカーだというマイナスの印象を顧客に与える――などだ。

 同社では、これらリスクに対処するため、「5万本以上売れるメジャーなソフトしか1980円で売らない」、「早い段階で、ショップの1980円コーナーに50種類のソフトを並べ、品揃えの多さを武器により多くの購買を獲得する」、「製品開発の段階から、徹底したプロジェクトリーダー制を貫き、企画段階から販売に至るまで、リーダーに数値責任を負わせる」などの方針を打ち出す。パソコンソフト分野で、一般的には「1タイトル1万本売れればヒット商品」と言われるなか、5万本は簡単なことではない。松田社長は、「リスクは十分に認識している。販売本数における損益分岐点のハードルが2倍も高くなった。しかし、1980円で確実に5万本売れるソフトを50種類揃えれば、着実に儲かる。売れないソフトを半額にする手法とは、発想が根本的に違う」と話す。

 同社の今年度(2003年3月期)の売上高は約80億円(推定)で、経常利益率は約10%という。1980円ソフトの品揃えが本格的に増える来年度(04年3月期)は、売上高100億円、経常利益率は同じく10%を目指す。事業計画では、1980円ソフトの売上構成比が約半分を占める見込みで、売上拡大の原動力に1980円ソフトを位置づける。また、パソコン流通チャネルに加えて、コンビニや書店、レンタル店、生協、スーパーなどの新規チャネルも増やす。来年度は、パソコン流通チャネルで前年度比2倍の400万本、新規チャネルで100万本の計500万本の販売を目指す。04年度(05年3月期)は、既存チャネル600万本、新規チャネル400万本で計1000万本を売るという壮大な計画だ。単純に計算して5万本売れるヒットソフトが200タイトルも必要だ。

 松田社長は、「ソフトウェアで最大のコスト削減は、販売本数を増やすことだ。同じ投資で2000本売るのと5万本売るのとでは、1本あたりのコストは格段に違う。5万本売るには、『どう見ても安い』と思わせるような割安感のある1980円にしなければならない」と話す。競合企業は、「他社が参入し1980円ソフトの開発競争が激化すれば、業界にとって刺激になる」(NECインターチャネル)、「値段ではなく、コンテンツの中身のほうが販売をより大きく左右する」(ホロン)、「ウイルス駆除ソフトは総合的なサポート力が勝負であり、価格だけではない」(トレンドマイクロ)、「1980円ソフトの対抗策を検討中」(競合他社)など、さまざまだ。ソースネクストの1980円戦略の成否に注目が集まる。
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