店頭流通

コンシューマ向けセキュリティソフト市場 値下げ競争、激化

2003/06/30 18:45

週刊BCN 2003年06月30日vol.996掲載

 コンシューマ向けセキュリティソフト市場が騒がしい。これまで、シマンテックとトレンドマイクロによるトップシェア争いだけが注目の的だった構図が、ソースネクストの低価格戦略により、一変したのだ。(木村剛士●取材/文)

値下げ競争、激化

 ソースネクストが「コモディティ戦略」を掲げ、主力セキュリティソフトを1980円で発売してから2か月余りの6月上旬、本数ベースでトレンドマイクロを初めて抜き、2位へと踊り出た(BCNランキング、6月2―8日の週次データ)。シマンテックのシェアも下落傾向にある。これまでシマンテック、トレンドマイクロの両社でシェア約90%を獲得していた市場だけに、そのインパクトは大きかった。

 シマンテック、トレンドマイクロはともに、「(ソースネクストの伸び率は)これ以上は続かないのではないか」と予測。「現段階での追随はない」と口を揃える。トレンドマイクロの箕浦幸雄・第二営業本部長は、「当社のユーザー調査では、価格を1番に考えているユーザーは全体の13%程度に過ぎない」と、強調する。だが、シマンテックでは、今後の動向次第では対抗策に打って出る可能性も示唆する。成田明彦社長は、「今後半年、ソースネクストが今以上の伸びるようなことがあれば、考えなければならない」と話す。「コンシューマ市場でトップシェアを維持しなければ、企業向けビジネスにも影響する」と、トップシェア死守の構えを示す。

 また、同社の齋藤秀明・執行役員コンシューマ営業事業部長は、「もし、低価格戦略に参入する時は、その時は他社を駆逐するような(ソースネクストと)同等以上の価格設定で勝負する」と、大胆な発言を口にする。トレンドマイクロは低価格化こそ口にしないが、コンシューマ事業強化を加速させている。具体的には、「店頭を一層強化する」(箕浦本部長)として、ソフト有効期限の更新専用パッケージの店頭販売というこの業界では初の試みを検討している。「低価格戦略への対抗策ではない」(同)としながらも、店頭専任の販促部隊を設けるなど、新たな強化策が目立つ。

 また、両社はともに6月下旬から、主力セキュリティ製品を値下げするキャンペーンを開始。シマンテックは6月25日から価格3800円、トレンドマイクロでは6月27日から3900円と、ライバル意識をむき出しにするとともに、ソースネクストへの対抗策とも受け取れる施策を打ち出してきている。店頭関係者は同市場の現状を、「低価格化がソフト業界に浸透すれば、デフレ化する恐れはある。しかし、ソースネクストの1980円戦略は、ユーザーをソフト売り場に確実に引きつけているし、競合他社も刺激している」と冷静に分析する。

 ソースネクストが販売するセキュリティ製品の開発、製造元である米ネットワークアソシエイツ(NAC)は、ソースネクストとの販売代理店契約を今年9月末で打ち切ることを決定している。NAC、ソースネクストが9月以降、どのような戦略を展開していくのか動向が注目される。また、9月は例年シマンテック、トレンドマイクロの両社が新バージョンを発表する時期。ソースネクストが9月まで今以上の伸び率を記録していた場合、2社はどのような販売戦略、新バージョンを発表するのか。今秋、コンシューマ向けセキュリティ市場は大きな局面を迎えそうだ。
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