店頭流通

パソコン市場 低価格化への動き加速

2003/10/27 16:51

週刊BCN 2003年10月27日vol.1012掲載

 パソコンの低価格化が鮮明になってきた。新興メーカーが相次いで低価格パソコンの生産体制を強化。販売店もその取り扱い量を増やしている。リサイクルパソコンの増加も低価格化への圧力として作用する。新興メーカーは取り引き先の販売店を限定して流通在庫の削減に努めるなど、安定した収益モデルを築きつつある。

リサイクルパソコン増加も背景に

 新興メーカーの販売台数が伸びてきた背景には、販売店の取り扱い量の増加が挙げられる。価格3万9800円(本体のみ、デスクトップ)の商品など低価格パソコンで有名なマウスコンピューター(エムシージェイ、高島勇二社長)は、今年から大手パソコン量販店への納品数を増やし、今年度(2004年3月期)は12万台(前年度比約2倍)の販売を見込む。

 高島社長は、「当社のウェブ直販では、前年度比10%程度しか増えていない。量販店での販売増が原動力」と話す。4万9800円パソコン(本体のみ、デスクトップ)などで販売台数を伸ばすイーマシーンズ(ウェイン・イノウエ社長)は、年間販売台数10万台に向けて勢いを増している。アロシステム(大野三規社長)は、ユニットコムとの合併で来年度(05年3月期)は年間30-40万台の販売台数を見込む。これまでの商戦ピーク時の月産約2万台と比較して大幅に伸びる見込み。

 また、エフ・アイ・シー販売(FIC販売、蔡永桂社長)は、96年にヤマダ電機と提携して以来約7年間で出荷台数を3倍近くに増やした。

 パソコンの低価格化が進む背景には、これら新興メーカーの躍進に加え、リサイクルパソコンの台頭も引き金になっている。今年7月にヤマダ電機と業務提携したインバースネット(関戸光雄社長)は、月間7000台のリサイクルパソコン出荷台数を来年4月までに同2万台に拡大させる。関戸社長は、「リサイクルパソコン市場は、5万円以下を中心にここ数年台数ベースで2ケタ成長している」と推測する。

 低価格パソコンメーカーには共通点がある。それは、原則として流通在庫を持たないことだ。販売店と個別の契約を結び、客層や地域、販売能力などの特性を詳細に調査する。そのうえで、最適なパソコンを受注生産(BTO)方式で組み立て、売れる分だけ納品する。FIC販売の蔡社長は、「この7年間、売れ残りは1台もない」と断言する。

 加賀電子の子会社、マイクロソリューション(山名和夫社長)は、ノジマとさくらやの2社にパソコンを納入しているが、「長期間のパートナーシップを組める販売店だけと取り引きする」(江口聡取締役)方針を打ち出す。イーマシーンズの取引先も九十九電機と石丸電気の2社だけだ。

 新興メーカー関係者は、「販売店同士が競合するような出荷をすれば、販売店の意欲が下がり、流通在庫が発生しやすくなる。これでは、NECや富士通など大手メーカーと同じ。販売店が『優先して売りたい』と思ってもらえるような仕組みを、どう作り上げるかがポイント」と打ち明ける。

 電子情報技術産業協会(JEITA)が10月21日に発表した今年度上半期(4-9月)のデスクトップパソコンの平均販売単価は、前年同期比10%減の13万6000円と下落傾向にある。

 年間の国内パソコン販売台数およそ1200万台のうち、NEC、富士通など大手メーカー以外のいわゆる「ホワイトボックス」系パソコンは全体の10%程度だと言われる。これについて高島・エムシージェイ社長は、「将来は米国と同じ30-40%程度に拡大するのでは」と予測する。
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