店頭流通

ベンキュー PC周辺機器からデジタル家電へ

2004/06/14 18:45

週刊BCN 2004年06月14日vol.1043掲載

 パソコン周辺機器メーカーとして成長を続け、台湾に本社を置くベンキューが、デジタル家電メーカーへと転身しようとしている。最近では、自社ブランドビジネスを積極化させ、20ジャンル以上の製品ラインアップを武器に、OEM(相手先ブランドによる生産)供給に加え、「ベンキューブランド」を台湾だけでなく、ワールドワイドで浸透させていく方針だ。日本をはじめとした世界市場での今後のブランド戦略と、OEMビジネスの強さの秘密を現地で取材した。(木村剛士)

ブランド力の向上目指す

■“デジタルライフを豊かに”

 「デジタルライフスタイルをさらに豊かにすることが使命」とは、ベンキューのK・Y・リー会長兼CEO。パソコンを中心とした「周辺機器のベンキュー」というイメージが強いが、家電のデジタル化でパソコンと家電の垣根がなくなっていることから、急激にデジタル家電メーカーへと変貌しつつある。

 既存のパソコン、記録型DVDドライブやマウス、キーボードなどのパソコン関連機器に加え、携帯電話や液晶テレビ、プロジェクタ、デジタルカメラなどのデジタル家電も豊富に揃え始めている。今では扱うジャンルは20種類を超えるようになった。デジタル家電も加えたこの豊富な商品群を武器に、ベンキューが今、力を入れているのが、自社ブランドビジネスだ。

 ベンキューグループの全売上高39億5000万USドル(2003年5月-04年5月、約4400億円)のうち約7割を占めるのが、OEMビジネス。液晶テレビやプロジェクタを中心に、世界の大手電機メーカーにOEM供給することで、安定的な収益をあげている。

 その一方で、シェーファー・リー社長兼COOは、「なるべく早い段階で、自社ブランドビジネスとOEMビジネスの比率を50%ずつにする」考えを明らかにする。ベンキューブランドを世界で広くアピールしていき、自社ブランド製品の販売拡大を目論んでいる。そのため、プロモーション活動には積極的に動いており、多額の資金を投じ欧州サッカーの祭典「UEFA EURO2004」の公式スポンサーとして参加したことも、その一環だ。

 今月1-5日までベンキューの地元である台湾・台北市で開かれた「コンピュテックス台北2004」では、約3000の出展ブースのなかでもトップクラスの展示面積で、デジタル家電メーカーをアピール。小さなブースが所狭しと並ぶ展示が特徴のコンピュテックス会場の中で、圧倒的な存在感を示した。


 ベンキューの展示で目立っていたのは、MP3プレイヤーや液晶テレビ、プロジェクタなどのデジタル家電製品。液晶テレビは12種類のラインアップを展示したほか、46型の大型液晶テレビも初めて公開した。開催期間中は、ベンキューの広告で車体全面をラッピングしたバスが台北市内を走行するなど、さまざまなプロモーションを展開した。

■日本市場を重視

 ワールドワイドでブランド価値を高め、自社ブランドビジネスを推進していくためには、「日本での実績が必要になる」と語るのは、日本を含めアジア・パシフィック地域を担当するエイドリアン・チャン・アジアパシフィック担当社長。「日本は製品やデザインに対する要求レベルが高く、極めて敷居が高い市場。だが、日本で成功すれば『日本で売れているブランド』として他国で自然と人気が集まる」と、日本市場の重要性を話す。

 日本でのビジネス戦略は、「一挙に投入するのではなく、1つひとつのジャンルで実績を作ってから」と段階的に製品を投入してきており、これまではパソコン関連製品のみで、わずか3ジャンルしか販売を手がけていなかった。しかし、自社ブランドビジネス拡大戦略では日本市場も当然ターゲットになる。今夏には、液晶テレビやMP3プレイヤーを投入する計画。

 オーストラリアやインド市場での立ち上げを担ってきた日本法人のデイビッド・デン・セールス&マーケティングディレクターは、「品質に対する要求が高いことを意識し、各ジャンルのなかでもハイスペックモデルを投入していくことになる」と、製品を絞って日本市場でのベンキューブランド普及を加速させる。

■世界各地に生産拠点

 豊富な製品群を作り出してきたバックボーンとしてベンキューの強みとなっているのが、世界に点在する研究開発拠点と工場。

 生産拠点は台湾のほかメキシコなど4か国に工場を保有。プロジェクタや液晶テレビの製造を行う台北市内の桃園工場では、液晶テレビを1週間で450-550台製造する。約50人が流れ作業でそれぞれの持ち場を担当。色バランスの確認など、15種類以上のテストを実施し梱包まで行う。液晶プロジェクタでは、清潔さが求められることから、クリーンルームを5つ設置し、5種類のテストを徹底し厳しい品質管理を行う。工場内では、ベンキューブランド製品だけでなく、他社のロゴの入った製品が普通にラインを流れる。OEMビジネスの実績を垣間見ることができた。

 一方、研究開発では、「売上高の4%を研究開発費に投じている」(リー社長兼COO)とともに、4拠点の研究開発センターでは、3000人いる同社エンジニアのうち、約2000人を研究開発に従事させている。同社のエンジニアの人数は、3年前に比べて2倍に増えており、さらに「3年以内には現在の2倍にあたる6000人規模まで増やす計画」(リー社長兼COO)だ。加えて組み込みソフト開発の人員が不足しているとして、「中国に開発・生産子会社を新たに設立することも検討」(リー社長兼COO)している。

 ラインアップの拡充や機能拡張のために、さらに足場を固めて、デジタル家電メーカーとしての存在を高めていく計画だ。

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