店頭流通

<薄型テレビの市場動向>松下、シャープ好調 ソニー、東芝は低迷

2004/08/09 18:45

週刊BCN 2004年08月09日vol.1051掲載

 アテネオリンピック“特需”で、PDP(プラズマディスプレイパネル)や液晶など薄型テレビの販売が好調だ。電子情報技術産業協会(JEITA)の調べによれば、2004年1-6月における薄型テレビの国内出荷台数はPDPと液晶ともに前年同期の1.5倍以上の伸びを記録。松下電器産業やシャープは、04年度(05年3月期)第1四半期で薄型テレビの売上高を前年同期の2倍以上に伸ばすなど、順調な販売をみせている。一方、ソニーや東芝は映像ニーズをうまく獲得できず販売が鈍化した。薄型テレビ市場の伸びは今年末でピークに達するとの見方もある。今年の年末商戦でテレビ販売による家電メーカーの明暗がはっきりとしてくる可能性が高い。(山本雅則(大阪駐在)、佐相彰彦●取材/文)

家電メーカーは明暗分かれる

■夏商戦で拡販に拍車かかる

 松下電器産業は、04年度第1四半期の連結業績で、売上高が2兆1020億円(前年同期比19.2%増)、営業利益が前年同期比2.2倍の435億円、税引前利益で同3.2倍の805億円、最終利益で同12.1倍の328億円と大幅な増益を果たした。、PDPテレビ「ビエラ」の好調が業績アップのけん引役の1つとして挙げられる。同製品の売上高は453億円と、前年同期の2.2倍に伸びた。主力のAVCネットワーク分野は、売上高が8353億円(同0.8%減)と減少したものの、映像・音響機器で売上高が3455億円(同9.3%増)と増加している。


 川上徹也・専務取締役は、「夏商戦での拡販に向け、主要な家電量販店でビエラの新製品13機種を発売日に合わせて展示した」と話す。競合他社より早く展示棚を確保することにつながり、「国内シェア30%を獲得できた」(川上専務取締役)と自信をみせる。

 シャープは液晶テレビの販売が好調だったことから、04年度第1四半期の連結業績が売上高で6012億円(同17.5%増)と順調に伸び、利益面でも営業利益353億円(同22.1%増)、経常利益335億円(同30.1%増)、最終利益195億円(同39.3%増)になった。

 AV・通信機器は売上高が2155億円(同13.9%増)、そのうち液晶テレビの売上高が前年同期の2倍にあたる562億円を記録。出荷台数では、同1.8倍の46万台に達している。

 佐治寛副社長は、「22インチ以上の大型ワイドが堅調で、出荷台数全体の30%を占めるまでになった」と、大画面の需要増が売上高の伸長につながったとしており、「通期では45%になるのではないか」と、ますます液晶テレビの販売が伸びるとみている。

 一方、ソニーと東芝は、薄型テレビの販売が低調だ。両社とも薄型テレビの販売実績を明らかにしていないものの、ソニーが「フラットパネルは販売が堅調だったものの、コスト減が図れず利益につながらなかった」(湯原隆男・執行役常務)、東芝は「液晶テレビに関しては競合他社と比べ出遅れているのは否めない。そのため、販売が厳しく、損失面では赤字が前年同期並み」(笠貞純・取締役執行役員上席常務)という状況だ。

 ソニーに関しては、AV(音響・映像)機能を搭載したパソコン「バイオ」の拡販にも力を入れたものの、「夏商戦に向けてコンセプトを一新した製品を発売したが、ユーザーに新しい用途提案が伝わらなかった」(湯原執行役常務)と肩を落とす。薄型テレビとパソコンの両方で映像ニーズに対応した戦略が振るわず、うまく映像需要を取り込めなかったようだ。

photo■アテネに向け映像需要爆発

 テレビがアナログ機器からデジタル機器へと移行することに加え、今年が“オリンピックイヤー”ということもあり、映像需要は爆発的に増大している。

 JEITAによれば、今年1-6月における薄型テレビの国内出荷台数は、PDPテレビが13万4000台(前年同期比53.5%増)、液晶テレビが101万8000台(同65.7%増)と両製品ともに1.5倍以上に増えた。特に6月は、PDPテレビが3万6000台(前年同月比98.6%増)、液晶テレビが22万5000台(同84.5%増)と2倍近い伸びを記録している。家電メーカー各社は、今後も薄型テレビの販売をさらに強化していく。

 松下電器産業では、「デジタル商品は今後も伸びていく。PDPテレビを核にDVDレコーダーとデジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、プリンタなどがネットワークでつながる展開を図っていく」(川上専務取締役)と、さまざまな機器を組み合わせることで販売増の相乗効果を狙う。

■液晶は年内に1インチ1万円

 シャープでは、「今年度の300万台という販売台数見通しを変えるつもりはない。金額でも3000億円はいける」(佐治副社長)と強気の発言。しかも、「価格については年間20%下がると、これまでも言ってきた。昨年の12月は32インチが41万円弱だったが、今年末には32万円強になるだろう」(同)と、大型機種で1インチ1万円の実現をほのめかし、液晶パネルのコスト削減で低価格戦略を打ち出すことを示唆している。

 シャープが液晶テレビで値頃感のある価格を打ち出すことになれば、需要がますます増大し、今年の年末には薄型テレビ市場の伸びがピークに達するという見方が出てきている。低価格に対応し、薄型テレビ市場のシェアで主導権を握るのは、自社で液晶パネルやPDPをもつメーカーの可能性が高い。

 パネルを外部から調達しているソニーは、「コンシューマ市場では、以前から価格が下がるという状況があり、薄型テレビに限ったことではない。ポイントはキーデバイスで、液晶の周辺デバイスやデジタル回路などの内製化でコストを削減する。しかも、単に価格下落に対応するだけでなく、他社よりも異なった製品で差別化を図っていく」(井原勝美・執行役副社長兼グループCSO&CFO)と強調する。

 「今夏は猛暑で、昨年と比べエアコンが売れている」と、多くの家電量販店から声が挙がる。家電メーカーにとっては、薄型テレビの販売が予想に反して鈍くなったメーカーが多いといえるだろう。そのため、今年の年末商戦に向け、各社一斉に拡販を図ろうと激しい競争が繰り広げられることは間違いなさそうだ。
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