石井克美のデジタル家電ナビ

<石井克美のデジタル家電ナビ>25.VODサービス普及の条件

2005/10/03 16:51

週刊BCN 2005年10月03日vol.1107掲載

 「ビデオオンデマンド(VOD)」サービスが広く普及するためには、以下の3つの条件があると考えられる。

コンテンツの充実

 有料配信である以上、視聴者がお金を払っても見たいと思わせるコンテンツの質と量の拡充が重要となる。

適切な料金体系

 視聴1本単価の問題。それに加えて「視聴期間が限定される」などの制限があると、料金に見合ったサービスとはなかなか言い難い。期間があるぐらいならば、レンタルビデオで十分。VODの特徴である「いつでも」を捨ててしまえば、「価格の高い有料放送のようなもの」になってしまうのだ。

導入がわかりやすい

 例えばケーブルテレビ(CATV)やWOWOWのように業者に依頼すれば簡単に見られる至便さ。届くのが電波か電線かの違いで、あとはテレビに向かってリモコン操作するだけといった具合の簡便さが必要だ。

 サービスの対象となる顧客は、必ずしもIT関連情報に敏感であるとは限らない。むしろネット回線など1度も引いたことがない人も多く契約すると考えられる。となれば、VODサービスはIPベースのソリューションではあるけれども、まずパソコンの接続が前提という考えを捨てることが重要である。

 こうしたからの条件を満たすものとして注目できる新規VODサービスが、テレビ局の積極的な参加だ。今まで放送をオンタイムで見るか、録画するしかなかったテレビドラマやバラエティ番組がVODで登場するとしたら、そのインパクトは大きい。

 テレビドラマをインターネットでストリーミング配信する場合の著作権使用料金について、今年3月にコンテンツの利用者9団体で構成される利用者団体協議会とコンテンツを保有・制作する著作権関係団体間で使用料額が決まった。

 放送コンテンツをIPベースで配信するという事業は「通信なのか放送なのか」という問題に加え、権利関係が非常に複雑なため長らく頓挫していた。これまでのVODが、配給会社や制作会社が権利を持つ映画や音楽プロモーションビデオといったコンテンツ中心となっていたのには、こうした背景があった。

 この権利問題については、2002年2月に日本経済団体連合会(経団連)が設置した「ブロードバンドコンテンツ流通研究会」という組織が、長い時間をかけてとりまとめを行ってきた。権利関係がもっともやっかいなドラマ配信に双方の合意が得られたことを受けて、今後は他のコンテンツの権利処理にも弾みがつくと予想される。
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