臨界点

コーレル 代表取締役社長 下村慶一

2006/03/06 18:45

週刊BCN 2006年03月06日vol.1128掲載

 ドローイングソフトの有力ベンダーであるコーレルは2004年12月に日本法人を設立した。初代社長の下村慶一氏は、もとユーリードシステムズ社長という経歴を生かして代理店販売網を展開し日本法人の足場を固めてきた。05年11月期の売上高は前年比3倍に成長し、「ユーリードで3年かかった店頭施策を半年で実現した」と、日本市場で地に足の着いたスタートを切った。 田澤理恵/文 馬場磨貴/写真

日本法人設立で売り上げ3倍に アニメ大国日本のニーズをくみ取る

 ――日本法人を設立した狙いは。

 「これまで、カナダ本社主導のビジネス展開だったため、日本市場にふさわしい販売体制ができていなかった。日本には、世界的なアニメ文化があり、デジカメユーザーも多い。それだけグラフィックリテラシーの高い国だ。こうした日本市場の先進的なニーズを吸い上げて、製品づくりに反映させるためにも日本法人が必要だった。さらに、アジア地域の販売網づくりも遅れているので、将来的には日本法人が中核になって、アジアの市場開拓も行っていきたい」


 ――日本法人ができたことで、売り方や店頭への販売支援はどう変わったのか。

 「この1年、店頭販売のチャネル開拓に奔走してきた。現在ではようやくほとんどの販売店でコーレル製品を扱ってもらえるようになった。顧客が買いやすく、販売店が売りやすい仕組みを生み出すために、いろいろと工夫も重ねている。

 たとえば、売り場の状況に応じて、平台でも棚でも使える柔軟性のあるPOPづくりも開始した。

 売りやすい商品づくりという点でも、以前から独自の試みを行っている。外資系ソフトの場合、アップグレード版を店頭販売していないケースが結構あるが、店頭、通販、ダウンロードなどの販売方法ごとに、消費者が求める要求に応えるのがメーカーの役割だと思う。

 そのため、われわれはアップグレード版も積極的に店頭で販売する方式をとってきた。こうした施策によって、日本の市場特性にあった販売体制が固まってきたと自信をもっている」

 ――この1年の成果は。

 「『ペインター』『コーレルドロー』『ペイントショップ』シリーズのプロからエントリーユーザー向けの製品を揃え、7製品、29モデルまで品揃えを増やした。この結果、昨年度の売上高は、前年度に比べ3倍に拡大した。今年度はさらに15%増を狙っている。OEMで提供したインストールベースのユーザーについても、アップグレードをこれまでの1・5倍にしていきたい」

 ――競合にはアドビという強力なライバルがいるが、対抗策は。

 「店頭市場では、アドビシステムズのシェアを抜くことを意識している。いつまでにとは言えないが、シェアは逆転できると確信している。まず大事なことは、数値よりもマインドシェア(消費者の心に占めるブランド力)を上げるためのアプローチを強化していくことが前提だ」

 ――今年度の目標は。

 「全体の品揃えを充実させてユーザーの間口を広げていきたい。コーレルのユーザーの7割が初心者層のため、とにかく操作性の向上がポイントになる。ソフトはバージョンが上がると機能が増えて、操作が難しくなりがちだが、初心者が扱いやすいラインアップを増やしていく。

 昨年から『コーレルペインター エッセンシャル2』と『コーレル ペイントショップ プロ スタジオ』を組み合わせた日本独自のパッケージ展開や、ペンマウス付きの『コーレルペインター エッセンシャル3』などを発売してきたが、こうした初心者向きの製品を出していく。また、ユーザー拡大のために、他社のソフトメーカーとアライアンスを組んで拡販を図ることも考えている」

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■国内販売網再構築でシェア2位につける

 デザインワークソフト「コーレル ドロー」シリーズ、ペイントソフト「コーレル ペインター」シリーズなどは、昨年2月までイーフロンティアが日本市場の代理店として販売していたが、3月以降は、コーレルが直接ショップへの販売を開始。同時に、パッケージも一新した。

 また、加コーレルは04年10月に、フォトレタッチソフト「ペイントショップ」を発売していた米Jasc Softwareも買収している。

 図は、BCNランキングによるグラフィックソフト市場のうち、ドロー、ペイント、ペイントドロー、グラフィックその他を抽出してメーカー別販売本数シェアを出したもの。首位はアドビシステムズで33.6%、コーレルは16.3%で2位。コーレルは、アドビに17.3ポイントの差をつけられているが、「将来的にシェアは逆転できる」と強気の見通しを示している。

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